フランス週刊誌サイドに立ったハッカー集団「アノニマス」の正体

2015年01月16日 09時00分

 テロ攻撃で多数の犠牲者が出たフランスの風刺週刊紙「シャルリー・エブド」の最新号が14日に発売され、バカ売れしている。通常は3万部ほどしか発行しないが、今号は500万部になるという。1面に預言者ムハンマドの風刺画を載せテロに屈しない姿勢を強調するが、イスラム過激派勢力のさらなる反発も呼びそうな雲行きだ。ハッカー集団「アノニマス」も同勢力への報復を宣言。日本の政府関係者は「アノニマスがついに正体を現した」と警戒している。

 パリ市内の売店には、同紙欲しさに50人以上の行列ができて発売から数分で売り切れに。フランス公共ラジオによると、事件を受けて300万部への拡大が決まっていた最新号は、500万部に増やされる。1面の風刺画では、イスラム教の預言者ムハンマドが「私はシャルリー」と書かれたメッセージを持ち、涙を流している。背景はイスラム教にとって神聖な色とされる緑。「テロには屈しない」という姿勢の表れだが、物議も醸した。

 エジプトのイスラム教スンニ派の最高機関「アズバル」は「憎悪をかき立てる」と声明を発表。パキスタンでは襲撃犯兄弟をたたえるデモが60人規模で行われた。一方、フランスのバルス首相(52)からは「フランスはテロとの戦争状態に入った」と穏やかならぬ発言も飛び出した。

 フランスがイスラム過激派への警戒を強めれば、過激派ではないイスラム教徒も緊張せざるを得ない。すでにサイバー戦争も始まった。アノニマスは今回のテロ発生後にイスラム過激派に対する報復攻撃を宣言。実際にイラクの過激派組織のサイトをダウンさせたという。

 アノニマスはリーダーも規模も不明のハッカー集団。過去には「アラブの春」と呼ばれるアラブ各国で起きた反政府運動で暗躍したり、日本の違法ダウンロード刑事罰化に反対して、いくつかのサイトに攻撃を仕掛けたりしたこともある不気味さが特徴だ。

 このアノニマスの動きに、日本の政府関係者は「これまで正体が全く分からなかったアノニマスですが、週刊紙の側に立ったことで、どちらサイドの集団なのかはっきりした」と指摘。表現の自由を訴える週刊紙側についたということは、アノニマスが西側諸国と価値観を共有する集団だと言いたいわけだ。

「彼らの報復宣言をネットで見ましたが、いまいち理由がはっきりしない。大きな声では言えませんが、どこかの国家とつながっていることも考えられるんじゃないですかね」(前出関係者)

 ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「あり得る話です。外国の情報機関ではハッカーを組織的に抱えていると指摘されているところもあります。ハッカーをアノニマスに潜り込ませて、都合のいいように誘導することができるなら、いろいろな工作に使えるでしょう」と話す。

 もっともそう簡単ではない点もある。

「アノニマスは国家権力を嫌っており、表現の自由などで権力に対抗してきました。暴くべき隠し事があるなら東西は関係ない。また、単純に暴くことに面白みを感じるのが原点なので、今回の報復宣言も本気じゃない可能性もある。世間をからかっているだけのようにも見えます」(井上氏)

 アノニマスは過激派が所有するネットアカウントをすべて閉鎖に追い込むと主張。本気なのか。