麺からゴキブリ、ナゲットからビニール片、ポテトから歯、バーガーから金属片…。毎日のように食品の異物混入が伝えられ、食の安全が社会問題化する中、都内のスーパーでとんでもない実行=実況犯が現れた。堂々と商品のスナック菓子につまようじを刺す犯行の一部始終を撮影した動画を動画投稿サイト「ユーチューブ」にアップ。愚か過ぎる犯人の目的と心理状態を専門家が分析してみると――。

 問題となっているのは11日に「店の商品にいたずらしてみたw2」と題して「ユーチューブ」にアップされた1分55秒の動画だ。

 動画はスーパーに入店するところから始まる。撮影者の顔は映っていないが、店の外観、本人の足や手元、店内の様子が映し出され、男の声による犯行の実況も。店に入るなり「皆さん元気ですか。『店の商品にいたずらしてみたw2』です!」などとタイトルコールまでしている。

 常連客なのか入念な下見をしたのか、勝手知ったる様子で菓子売り場までたどり着くと、商品棚の上段に並んでいた「じゃがりこ」のアルミコート紙のフタ部分に、持参したつまようじを迷いなくブスリと刺して、一瞬で“混入”してみせた。

 フタには、つまようじの通った小さな穴が開いたが、店頭で商品を手に取って気がつく大きさではない。

 男は何事もなかったかのようにきびすを返しながら「ま、こんな感じでしてね。超余裕ですよ」と言い放った。店を出るまで2分足らず。これが電光石火の「異物混入事件」の一部始終だ。犯行現場となったスーパーを運営する東急ストアの広報は「12日に、お客様からの指摘で犯行動画がネット上にアップされていることを知った。現在、商品は店頭から下げて安全性を確認しています」と説明。客や店員から、動画を撮りながらブツブツしゃべる不審人物の目撃情報は入っておらず、犯行予告や声明も届いていないという。

 男は一体、何の目的でこんなことをしたのか。元警視庁刑事で犯罪ジャーナリストの北芝健氏は「殺人の目的や、商品や店への怨恨の可能性は低いだろう。今、話題の食品の異物混入問題にかんで自己顕示欲を満たしたいがための犯行で、食品問題へのメッセージ性は皆無」と分析する。

 店が特定されるような動画をアップした心理については、「世間をあざむくことで得られるダークな快楽が、足がつくかもしれないという思考に勝っている。ネットの向こうの大衆を意識した犯罪という点では、秋葉原通り魔事件の加藤智大受刑者やPC遠隔操作事件の片山祐輔被告と共通する」と指摘した。

 東急ストア広報は「食品を扱う企業として許し難く大変困惑している。警察の捜査に全面的に協力します」としている。

 また、この動画は「w2」だった。ということは「1」もある。1月4日にアップされた「店の商品にいたずらしてみたw1」という動画を見ると、同じ声の男が西友の店舗に入り、「チョコチップメロンパン」を手に取り、ビニール袋の端を破って、また棚に戻した。この動画は4分42秒で、袋を破るのにもかなりちゅうちょしている様子だ。1週間で手口はスピーディーかつ大胆になっている。

 恐らく店内の防犯カメラに男は写っているはずで、いずれ逮捕されることは間違いないだろう。

 一昨年あたりから世間を騒がせていた、能天気なアルバイト店員などによる「バカなツイッター騒ぎ=バカッター騒動」がようやく落ち着いたと思ったら、今度は同様の「混入実況」。ネット社会が生み出した愚か過ぎる若者は、どこまで増え続けるのか。