パソコン遠隔操作事件で威力業務妨害等の罪に問われている片山祐輔被告(32)が4日、東京地裁で行われた公判で動機を語った。4人の誤認逮捕を出した犯行の理由は「権力に対する復讐心だった」。片山被告は過去に刑務所に服役していたことがあり、そこで刑務官からパワハラを受けたことで国家権力への反感を持つようになったという。

 片山被告の弁護団は裁判所に情状鑑定が却下されたため、接見を通して専門家に鑑定してもらうことにしていた。鑑定の結果は「心の整理がついて、犯行の動機が説明できるようになりました」(片山被告)という。

 当初、自らのITスキルの腕試しと言っていたが、本当はそうではなく「権力に対する怒りから復讐をしたい気持ちがあった」と説明した。片山被告はエイベックス関係者への脅迫などの罪で2006年に実刑判決が出て、埼玉の川越少年刑務所に服役した経験があった。

「初日から刑務官にひどい扱いを受けました。罵詈雑言に始まり、こぶしを顔の近くまで寄せて、『昔だったら殴ってる』と。『お前、甘っちょろい顔してるな』とも言われました。抗うつ剤を飲んでいると話したら『お前はキチ○イか?』とまで。これが怒りの原体験です」(同)

 片山被告はロックバンド「ブルーハーツ」の曲から“キチ○イ扱いされた日々”という歌詞を口ずさんで当時の状況を説明した。

 出所したら国や刑務官を訴えることも考えたがやめたという。しばらくすると、刑務官への怒りが国家権力全般への怒りに変化。「権力を行使できる人なら何でもいいんだと思い、警察を右往左往させることにしました。ほかの人(誤認逮捕の被害者など)の迷惑には思い至らなかった」(同)

 佐藤博史弁護士も接見で刑務官への怒りを聞かされていた。片山被告はベトナム戦争を題材にしたスタンリー・キューブリック監督の映画「フルメタル・ジャケット」を引き合いに出したという。

「映画では軍曹が新兵を訓練でしごくのですが、訓練所を出るときに1人の新兵が軍曹を撃ち殺して自殺する場面があるんですよ。そのシーンを自分になぞらえて話していました」(佐藤氏)

 公判で片山被告は「なぜ刑務官はあんなにも品性が狂っているのか」など、刑務官バッシングをしていた。「今も片山さんは刑務所は人を更生させる場所じゃないってよく言ってますよ。公判で言うのは勇気があるというか、(万一収監されたら)お礼参りされちゃう」と佐藤氏は心配する。

 片山被告は刑務所の体験から執行猶予をつけてほしいと希望している。弁護団もその方針で弁護しているが判決がどうなるかは分からない。同被告の被害主張が事実で、さらに実刑となれば再びハラスメントに遭う可能性もある。次回21日には論告求刑が予定されている。