本当に誰でもよかったのか――。埼玉・入間市で15日夜、コンビニでのアルバイトから帰宅中の大東文化大3年の佐藤静香さん(21)が自宅近くで刺殺された事件で、殺人容疑で逮捕された日本文化大2年の沼田雄介容疑者(20)が、計画的に犯行に及んだ可能性が浮上した。「誰でもよかった」と供述しているが、知人男性によると、学生生活と家族のことでトラブルを抱えて自暴自棄になっていたという。「コンビニにかわいい子がいる」と話していたとの情報もあり、日常生活のストレスに起因するストーカー殺人の線も出てきた――。

「ぬまっち(沼田容疑者)は『誰でもよかった』と言っているけど、知らない相手をあそこまでメッタ刺しにしますかね!? あいつ、絶対ウソついてる!」

 そう怒りで声を震わせたのは、沼田容疑者と同じ大学に通う同級生だ。それほど佐藤さんは残忍に殺害された。

 自宅近くのコンビニエンスストアでのアルバイトを終えた佐藤さんを沼田容疑者はつけ狙い、人通りも街灯もない脇道に入ったところで、持っていたナイフでいきなり背中を切りつけた。「キャー」と悲鳴を上げる佐藤さんに対し、なおも同容疑者は胸や脇腹など数十か所をメッタ刺しにした。地面はみるみる鮮血で染まり、この日行われた現場検証後も路上には生々しい血痕が残っていた。

 犯行から約3時間後の16日午前1時ごろ、沼田容疑者は埼玉県警狭山署に出頭。殺人容疑で逮捕されたが、動機については「人を殺そうとナイフを持っていたら、たまたまコンビニから女性が出てきた。誰でもよかった」と供述した。

 佐藤さんとの接点についても「見たことがある程度」と話しているという。

 沼田容疑者は、両親と高校2年の弟と4人暮らし。中学時代はサッカー部に所属し「神がかり的なセーブを連発する名ゴールキーパー。性格は明るくもなく暗くもない、まあ普通の感じ」(先輩男性)。地元の消防団でも活動し、将来の夢は警察官で、大学では刑法などを専攻していた。

 1つ年上の佐藤さんは同容疑者のすぐ隣の中学校に通い「後輩の面倒見もよく、慕われていた。服や髪形、ネイルなどの美容にこだわっていて、大学卒業後は美容師になりたいと話していた」(知人男性)という。

 互いの自宅の距離は徒歩10分圏内。2人を知る地元男性は「この辺はコミュニティーも狭いから、みんな顔見知り。共通の友達もたくさんいる。沼田は『(佐藤さんを)見たことがある程度』と言っているが、絶対にウソ。あの殺し方を見ても、2人の間に何かあったとしか思えない」とも語った。

 一部では、2か月ほど前に沼田容疑者が「コンビニにかわいい子がいる」と周囲に話していた、3週間ほど前に佐藤さんが「誰かに追われている気がする」と知人に相談していたなどの証言も出ているが、真偽は定かではない。

 一方、沼田容疑者にはある異変も起きていた。冒頭の同級生がこう証言する。

「2か月くらい前からちょっと元気がなかった。疲れているというか、やつれているというか…。俺が学校に行かない間に、大学でちょっとしたイジメに遭ってるという話も聞いた。それが原因なのかはわからないけど…3週間前に会ったときは、両親に『退学したい』と伝え、猛反対されたみたい。あれだけなりたがっていた警察官の夢を簡単に諦めたことにも驚いた」

 沼田容疑者は近所の酒販店でアルバイトをしていたが、それも8月に突然辞めたという。その後、知人に精神不安をのぞかせるメールを送っている。警察官の夢を諦め、自暴自棄になったことで今回の凶行に及んだとしても、あまりに理不尽としかいいようがない。