ガリガリにやせた幼い娘に犬の首輪、1年前に「死んだから山中に捨てた」次男(3=当時)の代わりに小さいマネキンを部屋に置いていたという鬼夫婦の正体とは? 警視庁捜査1課は8日、東京都足立区内のアパートで次女(4)を虐待したとして暴行と傷害の疑いで、無職の皆川忍容疑者(30)を逮捕した。同容疑者と妻(27)の間には計7人の子供がいた。この夫婦には次男の死体遺棄容疑もかけられている。常軌を逸した行動に当局は“最悪の事態”も視野に入れ捜査を進めている。

 無職なのに子だくさん…。皆川容疑者と妻の間には長女(8)、長男(5)、前述した次男と次女、三女(2)、三男(1)、それともう1人、生まれて間もないと思われる計7人。妻の年齢を考えると、出産ペースは恐ろしく早い。

 そんななか、皆川容疑者が次女への傷害、暴行容疑で逮捕された。捜査1課によると、今年の3月から6月にかけ、同容疑者が自宅アパート内で次女に犬用の首輪を付けたり、千葉県内のホテルなどで顔を殴った疑いが持たれている。

 6月に保護された当時の次女の体重は8キロ。平均的な1歳児の体重でも軽い部類に入る。同年齢の子供に比べて著しくやせ細っていたことから、当局は十分な食事を与えないなどの虐待を日常的に行っていた疑いもあるとみている。

 皆川容疑者は「勝手に食べ物を食べたからやった。しつけのつもりだったがやり過ぎた」と容疑を認めているという。

 同じアパートの住民は「美人の長女はかわいがっていたように思う。オシャレな服を着せて、小学校にも通わせていた。週に1回は外食に出かけていたが、連れて行くのは長女だけ。次女の姿はあまり記憶がない。近所付き合いのほとんどない家だから、どの子が何番目の子供かいまいち把握していませんがね」

 夫婦の疑惑はそれだけはない。当時3歳だった次男の行方が約1年前から分かっていないのだ。

「そのことを夫妻は必死に隠していた。児童相談所のスタッフが自宅を訪れても居留守を使ったり、インターネットで購入した1メートルのマネキンに布団をかけて次男であることを偽装していた。月額1万5000円という次男の児童手当をもらうためでしょう」とは捜査関係者。

 夫妻は児童手当以外にも生活保護を不正に受給していたとされる。児童手当は第2子までの3歳以上で小学校終了前は1万円だが、第3子以降だと1万5000円。生活保護では児童養育加算があり、この夫婦の場合は月額数万円が上乗せされていた可能性がある。こうして年間500万円もの収入があったとみられる。

 過去に別の事件で逮捕された夫婦は次男の不在について「昨年の3月ごろに、朝起きたら死んでいた。遺体は山梨県の河口湖周辺に埋めた」と供述。児童手当の不正受給で夫婦を立件するのと同時に、死体遺棄容疑を念頭に捜査を続けている。

「ただ、夫妻の供述があいまいで、遺体はまだ見つかっていない。捜査陣のイライラはピークに達している」(同)

 不正に得たカネで外食していたが、一方で昨年11月に自己破産。家賃なども滞納していた。

 もらうものはもらって、払うものは払わない典型的なパターンかに見えるが、当局の見立てはそれだけにとどまらない。

「あくまで仮定の話」と前置きした上で、ある関係者は戦慄の事態を危惧する。

「所轄の警察ではなく、殺人などを扱う捜査1課が陣頭指揮を執っていることがポイント。悪魔のような話ですが、ハイペースで妻に子供を産ませ、児童手当などをもらい、生活が厳しくなってきたら、そのうち何人かを“消すつもり”だったということも考えられる。無職夫婦に子供が7人もいるのはそれほど異常。次男の遺体を懸命に捜しているのも、死因を調べるためです」

 一部では妻は心の病を患っており、当局が責任能力の有無を調べているという情報もある。

 犬の首輪を付けられ、ガリガリにやせ細った状態だった次女はもちろん、残る5人の子供たちの将来はどうなってしまうのか。