北海道南幌町で、祖母(71)と実母(47)を殺害したとして高校2年生のA子(17)が殺人容疑で北海道警栗山署に逮捕された事件で、祖母ら家族によるA子に対する新たな壮絶虐待の実態がみえてきた。本紙既報の母屋への出入り禁止や、大雪の中で防寒具もつけずに外で祖母の帰りを待たされたことに加え、なんと生ゴミまで食べさせられていたという。一方、事件前に虐待疑惑を捜査していた警察への批判も浮上してきた。

 殺害を認めているA子が、祖母から「しつけ」という虐待を受けてきたのは本紙既報通りだ。

「家事の一切を押し付けられ、ろくに友達と遊ぶ時間もなかった。(A子が)家に友達を呼んだのを見たことがない」と近隣住人も同情する。

 さらなる衝撃的な証言を本紙は入手した。「A子は祖母から生ゴミを無理やり食べさせられていたそうだ。このときばかりは我慢強いA子も学校の友達に愚痴ったらしい」(A子の学校関係者)

 これが事実なら、A子は家畜と同等の扱いを受けていたことになる。一般的には“目に入れても痛くない”はずの孫にするしつけとはとても思えない仕打ちだ。

 そもそも、虐待の遠因は事件現場となった家にありそうだ。約20年前、祖父と父が共同で資金を出して家と土地を購入し、2世帯同居が始まり、A子が生まれた。

「祖母の夫は消防署のお偉いさんでした。定年間際に末期がんが見つかり、すぐに亡くなった。多額の生命保険と退職金、慰労金が祖母に入った」(家族の知人)

 事件当時、A子が1人で寝起きしていた「離れ」には当初、ダブルベッドがあり、父母が使用していた。「子供を寝かしつけた後、2人で飲みに行くほど仲良しの夫婦だった。でも、祖母が旦那さんに意地悪をするので夫婦は離婚した」(前同)。父母の離婚後、以前から祖母に疎ましく思われていたA子への攻撃が始まった。

 2世帯同居がなければ家族は幸せに暮らし、殺人事件など起こらなかったかもしれない。

 夫の遺産で大金を手にした祖母の実権は強さを増す。離婚後には母親もパートを始めたが、一家の経済的・精神的なドンは祖母だった。

 祖母から何度か家に招かれた近所の女性は「お茶に誘われて家に行くと『FX(外国為替証拠金取引)をしてる』とか『投資ファンドをやってる』とかの話をすることが多く、何かにつけて『家の改修は私が工事費を出したのよ』などと、お金持ちぶりをアピールしていた」と語る。A子が事件前まで奴隷状態に耐えていたのは、衣食住のライフラインである祖母に反抗できなかったからだとみられる。

 一方、地元では警察の責任を追及する声も数多く上がっている。「1~2年前と数年前、少なくとも2回は地域に栗山署の刑事が聞き取り捜査に来ている」(町内の女性)。同様の証言は本紙も複数から聞いた。「警察は『通報があった。近所で子供への虐待があった様子を見ていないか?』と聞いてきた」(別の住民)。近隣住民の多くはA子が家庭内で虐待を受けていたことを知っていたのだ。

 地元メディアもこの情報はつかんでおり、同署に問いただした。だが「警察は『情報は関知していない』と、絶対に認めようとしなかった」(札幌の報道関係者)。

 聞き取り捜査があった翌日、ご近所仲間たちは「うちにも刑事が来た。虐待ってA子ちゃんのことしか思いつかないよね…?」と話し合った。事件直後も警察は周囲に聞き込みに訪れた。「親とおばあちゃんが刺されたと聞いて、A子のことが頭に浮かんだ」と話す住民が少なからずいた。

 過去には岩見沢児童相談所がA子への家庭内暴力を認知。2004年2月には「母親から身体的暴力を受けている」として一時保護され、同年11月に帰宅していた。警察が全く知らなかったとは思えない。

「警察が事前の聞き取り捜査を認めようとしないのは、これが公になると『事件を防ぐ機会があった。警察の失態だ』と追及されるから、恐れているんだと思う」(前出関係者)

 A子のSOSは誰にも受け止められなかった形だ。