<神戸小1女児死体遺棄事件>矛盾するかのような動きは何を物語るのか。神戸市長田区の小学1年、生田美玲さん(6)の遺体がバラバラにされ雑木林で見つかった事件で、死体遺棄容疑で24日に逮捕された無職君野康弘容疑者(47)をめぐるナゾが深まっている。君野容疑者は「黙秘します」と供述。周辺住民の話で、同容疑者は数々の“証拠隠滅工作”を行っていたフシがあることが分かった。一方で「犯人だと思っていた!」と周りに確信させるような、奇妙な行動をとっていたという――。

 変わり果てた美玲さんの遺体が発見されてから一夜明けた24日、逮捕されたのは現場から約30メートルの文化住宅に住む君野容疑者だった。遺体の入ったポリ袋の中にあった同容疑者の診察券やたばこの吸い殻のDNA型が決め手となった。ポリ袋からは頭部のほか、手足などの部位がバラバラにされた状態で見つかった。

 君野容疑者について、近隣住民は「日中からカップ酒を飲んで酔っ払ったまま下半身丸出しで徘徊して立ちションしたり、バス通りに大の字に寝転がったり奇妙な人。部屋のベランダには酒瓶や空き缶が山積みになっていた」と明かす。

 美玲さんの足取りが分からなくなる直前の11日午後、長田区内の防犯カメラの映像に美鈴さんの後ろを離れて歩く君野容疑者の姿が写っていた。捜査関係者は「動きにちょっと違和感あるなということで捜査を進めた。見た目は、酒を飲んでフラフラしているような感じ」とその様子を語る。この映像で君野容疑者が捜査線上に浮かんだ。

 不明になって6日目の16日、捜査員は不審人物としてマークした君野容疑者の自宅を訪れた。捜査関係者によると、決め手はなかったが「ここらへん全戸を回っているんです」と言って接触。君野容疑者が承諾した範囲で家の中を調べたが、事件につながるものは確認できなかった。

 だが、この時点で君野容疑者が証拠隠滅の“工作”を図っていた可能性が高いと、ある住人が証言している。

「12日ごろやったかな? いきなり髪を茶髪に染めて短髪にカットしていたので見た目が変わっていた。1週間くらい前に同じアパートの人に『洗濯機が2つあるからあげる』言うて無理に洗濯機を押し付けていた」

 自分の容姿を変え、美玲さんや自分の着衣を洗濯したものを譲渡し、事件に関係するものを消し去ろうと考えたのか。

 住民は不審な物音も耳にしていた。「15日の深夜2~3時ごろに(遺体が発見された雑木林に続く)階段をドタバタ、何度も行き来する音がして騒がしかった」。16日の自宅捜索で証拠につながるものが見つからなかったのは、あわてて遺体を処分したためだったのかもしれない。

 さらに、美玲さんが行方不明になってからの君野容疑者の変化も住民には不自然に映った。

 別の地元住民は「あそこ(雑木林)で遺体が発見されたと聞いて、昨日のうちから“あの男やないか”と思っていた。男の部屋のベランダから遺棄現場がちょうど見えるんやけど最近、やたらとベランダに出て、裸でぼーっと現場の方を見ていたから」と指摘する。

 君野容疑者は約1年半前に現在の住宅に引っ越し、生活保護を受けて一人暮らしをしていた。もともと「ご近所トラブルを起こしてワーワーわめいては自分で通報して、1年で7~8回は警察が来ていたんやないやろか」(近隣住民)というトラブルメーカーで、浮いた存在だった。

 知的障害者に配布される療育手帳を持ち、捜査関係者は君野容疑者の知的能力を「かなり薄い感じ」と表現している。つまり、証拠を隠さねば捕まることはわかっていても、いわゆる知能犯のように、計算した上で見つからないように隠すことはできない。そのため、場当たり的に捨てたような犯行に及んだ可能性が考えられる。ポリ袋に診察券を入れたのも不用意に映る。

 とはいえ、君野容疑者は鹿児島県の出身で地元の水産高校を卒業後、22歳ごろから2年間ほど陸上自衛隊に入隊していた。知的障害が生じた経緯も含め、ナゾは多い。