茨城家族殺傷事件 専門家がプロファイル「なぜ30キロも離れた接点ない民家を襲ったか」

2021年05月11日 11時30分

県警の詳しい捜査が進められている

 茨城県境町の家族4人殺傷事件で、会社員小林光則さん(当時48)と妻美和さん(同50)を殺害した疑いで逮捕された無職岡庭由征容疑者(26)が事件前に購入した催涙スプレーは、複数回使える大型の物だったことが10日、分かった。水戸地裁が10日間の勾留を認め、県警はスプレーの購入目的を詳しく聴く方針。この事件の最大の謎は、なぜ自宅から30キロも離れた接点がないと思われる小林さんの家族を襲ったのかだ。専門家がプロファイリングした。

 事件では、夫妻が刃物で殺害された後、別の部屋にいた長男(14)が刃物で切られ、次女(13)が催涙スプレーをかけられケガをしていた。県警は、現場でスプレーが使われた場所や残された成分などを詳しく捜査している。不気味な目で取材カメラを見る岡庭容疑者の報道画像は、見た者に強い印象を与えた。

 日米で連続殺人犯、猟奇殺人犯など多くの凶悪犯と直接やりとりしてきた国際社会病理学者で、桐蔭横浜大学の阿部憲仁教授はこう語る。

「容疑者は、最低2つを満たせば将来連続暴行・殺人を犯す可能性が高いとかつてFBIが指摘した〝マクドナルドの三要素(小動物虐待、放火、夜尿)〟のうち、分かっているところで小学生時から猫虐待、その後に放火という2つを満たしていた」

 そして、16歳の時に「埼玉・千葉連続少女通り魔事件」を起こした。医療少年院送致となるが、昨年11月に硫黄やリシンなどの危険なものを持っているとの通報から今回の逮捕に至った。

 なぜ岡庭容疑者は犯行を繰り返し、いまだに「人を殺したい衝動がある」と自ら認める人格になったのだろうか? この事件を調べている阿部氏は「報じられている情報も加味すると、地元の名士である父親は高圧的な性格で、人の悪口ばかり言う母親が攻撃性の強い性格で教育に熱心であったこと、また、直接的な養育を祖母に任せ両親は容疑者にじかに向き合わなかったことがうかがえる」とした上でこう分析する。「特に、生後3年の間にこうした直接的愛情交流が欠如し持続的圧力のある環境下に置かれると、子供は『優しさ』や『共感』といった感情のシナプスを形成できず、情緒が欠如し強い攻撃性を抱えたサイコパス(感情のハンディキャップ)とサディズム(他者の苦痛に快感)を併せ持った人間へと成長することがある。この習性(攻撃性・無感情)は性欲と融合し、生涯定期的に放出され続ける」

 また、この事件で大きな謎となっているのが、埼玉県内の自宅から30キロ離れた民家を襲撃した理由だ。現場は、周囲を田畑や釣り堀に囲まれ、他の住宅からやや離れた位置にある一軒家。周囲は雑木林に囲まれており、外から様子は見えにくい。

「一般に何らかの接点があることの方が多いが、〝恒常的攻撃性〟を抱えた者であれば必ずしもそうでないケースもある。以前から特定の女児の後を付け回していたという指摘があることから、容疑者にしか分からない接点があった可能性もある。ケータイに被害者宅の下見映像が確認されていることから、たまたまサイクリングで通り掛かった際、絶好の犯行地だと強く感じた可能性もある。一般に、加害者の自宅と殺害現場の距離の中央値は約22キロという研究もあり、30キロは十分ありうる距離ではある」(同)

 かつて阿部氏がやりとりしていた連続殺人鬼「ナイト・ストーカー」ことリチャード・ラミレス(13人殺害、獄中死)は、夜間フリーウエーを使い、特に目的地を定めずその日の気分で一般道へ降り、ランダムに車を止めては、窓や鍵の開いている家に侵入し、レイプし殺害していたという。

 接点に関しては今後新たな情報が出てくる可能性も十分ありそうだ。