インターネットバンキング利用者の預金が別の口座に不正に送金された事件の大半が、中国人ハッカー集団による犯罪だったことが分かった。

 警察庁の発表によると、預金者のパソコンをウイルスに感染させるなどしてIDやパスワードを盗み取って不正に金を移すインターネットバンキングの不正送金事件は、今年半年間で1254件、被害額は18億5200万円となり、過去最悪だった昨年1年間の被害額14億円を上回った。

 被害は全国73の金融機関で、預金額が大きい法人名義の口座の被害が5億7200万円になり、昨年の同じ時期と比べて25倍に急増。特に地方銀行や信用金庫などの金融機関では法人口座の被害が8割近くを占めた。

 これまでに133人が検挙されているが、うち6割に当たる83人が中国人だったことが判明。送金先の口座も中国人名義が全体の7割近くを占めていた。中国人留学生などが帰国する前に送金先の口座を日本で作って売買している新たな実態も分かった。

 警察庁は国際刑事警察機構(ICPO)を通じて中国公安当局に捜査共助を依頼。しかし、中国の犯罪組織の活動実態は不明で、捜査員を派遣するにしても手がかりが少ないという。

「事件を主導したとみられるのは中国福建省に拠点を置くハッカー集団。現金の8割はハッカー集団に送金されて、残り2割が協力したグループなどが受け取っていた可能性が高い。パソコンを感染させるウイルスは、闇市場で売買されるネットバンキング詐欺ツールによって作られたと考えられます。容易にウイルスが作成できるもので、取引価格は数十万円といわれています」(捜査関係者)

 警察庁は金融機関に対して対策の強化を要請し、取り締まりの強化を進めている。