サイコパスと自称したのは本気だった。パソコン遠隔操作事件の片山祐輔被告(32)が“遠隔操作殺人”の構想を弁護士に明かしていた。7日、同事件で威力業務妨害などの罪に問われた同被告の第15回公判が東京地裁で開かれ、被告人質問が行われた。弁護団が求めている精神鑑定が行われるかどうかは未定だが、佐藤博史弁護士は必須と主張。というのも、同被告はこれまでの接見で「人を殺すことも考えた」と、その手法まで明かしたからだという。

 この日の被告人質問では神奈川・江の島で猫の首輪に記録媒体を付けた時点から逮捕、保釈を経て真犯人と判明した時点までが対象時期となった。弁護団は「必ずしも法廷で述べていることがすべてではない」と、より深い動機や事件の背景を知るために、専門家による情状鑑定を求めている。

 検察側は「殺人事件ではないし、死刑や無期懲役になるものでもない」として反対している。これに対し佐藤弁護士は「検察の反対は殺人衝動がないことが前提となっているが、片山さんは人を殺すことも考えたことがあると話している」と、片山被告の抱える心の闇にしっかりと向き合う必要性を唱える。

 いきなり出てきた片山被告の殺人願望には驚くばかり。実は兆候はあった。弁護団の1人は「片山さんは過去に『首切り』『人切り』『惨殺』『試し切り』といったキーワードでネット検索していたことがあります。2012年前半に多いですが、10年、11年にも検索したことがあったと思われます」と話す。

 世間を騒がせた長崎・佐世保市の高1少女同級生殺害事件にも片山被告は関心を寄せているという。接見で「前にもありましたよね」と10年前に佐世保市で起きた小6女児同級生殺害事件にも言及。同事件がネットでどう話題になったかを弁護士に解説したという。
 猟奇的事件に興味を持っているとはいえ、パソコン遠隔操作という事件の性質から考えると、片山被告が殺人を犯すというのは想像がつかない。一体、どんなことを考えていたのか。佐藤弁護士を直撃した。

「真犯人と分かって拘束された後に『殺人を考えたことがある』と聞いた。片山さんはサイバー空間で行動することが得意というか、それしかできない人だから、そこでどういうことが可能か考えたことがあるそうだ」(佐藤弁護士)

 といっても刃物で人を刺すのではないようだ。佐藤弁護士が接見で「コンピューターを使った殺人ってどうするの」と聞くと、片山被告の口からは「ドローン」という言葉が出てきたという。

 ドローンとは無人で飛行することができる航空機のこと。コンピューターによって遠隔操作されることで飛び、すでに軍事利用されている。また、ネット通販会社「アマゾン」が商業利用を検討しているとしてニュースになったこともある。アマゾンはドローン、つまり無人飛行機を使って、商品を配送しようとしているのだ。

「片山さんはアマゾンのことも知っていた。ドローンを使って、爆弾を配達したりできると言っていた」(同)。なんと自らの遠隔操作の技術を使って、ドローンで爆弾を運ぼうという発想を持っていたのだ。

 だからこそ、佐藤弁護士は片山被告の情状鑑定を強く求めている。「そういう心を鑑定しないと。彼も苦しんでいるんだ」(同)

 片山被告は無罪の虚偽主張をした過去もあるだけに、「殺人」発言の真意も問われる。

 パソコン遠隔操作事件と殺人願望。

 無関係にみえるが、片山被告の内面を解明することが必要かもしれない。