見逃された猟奇少女のサイン、精神科医の通報を無視

2014年08月02日 07時00分

 父親は惨劇を止められたはずだ――。長崎県佐世保市の高校1年生、松尾愛和(あいわ)さん(15)が殺害され、同級生の女子生徒A(16)が逮捕された事件で、Aの父親の知人から「おかしいのは父親」との非難の声が飛び出した。漂白剤混入に、金属バットで父親を殴打…。この時点でAを診察した精神科医から児童相談所に「このままではあの子は人を殺しかねない」と通報があったことが分かった。しかし、児童相談所は動かず、娘の危険な兆候を聞かされたはずの父親は、Aに一人暮らしをさせた。これに対し父親の知人の口から大批判が飛び出した。

 精神科医から「佐世保こども・女性・障害者支援センター」(児童相談所)に電話があったのは6月10日。長崎県関係者によると、精神科医は「小学生のときに薬物混入事件を起こし、中学生になって父親を殴打した。小動物の解剖をしている。このままいけば人を殺しかねない」と話したという。

 高校1年生で15歳とまでは明かしたものの、医師として守秘義務に抵触するとして名前は言わなかったという。匿名ではどうしようもないと、児童相談所は対応しなかった。しかし、医師は名乗っていたので、医師に直接会って詳細を聞くことはできたはずだ。また、たとえ匿名でも薬物混入事件は市教育委員会が把握していることであり、連携を取れば特定は不可能ではなかったはず。事件は未然に防げたかもしれなかった。

 児童相談所所長は「何もお話しできない」を繰り返すのみ。報道陣から「本当は名前を知っていたんじゃないですか」と追及されシドロモドロ。地元の名士の父親に配慮した?との疑惑も出た。

 Aの狂気が膨らんだのは家庭だ。一家の大黒柱である父親はどんな人物なのか。

 30年来の知人という男性は「あいつが20代のころに、(元農相の)山田正彦さんの法律事務所で働きだしたんだ。山田さんが政治家に転身するときは、あいつも選挙を手伝ってた。その後、独立した。正義感のあるいいやつだった印象しかないよ」と語る。

 独立してからめきめきと頭角を現し、事務所は拡大。豪邸も構えた。青年会議所やロータリークラブに顔を出し、人脈を広げた。好人物だったようで、人に好かれたという。将来は政治家を目指していたのだろうか。

 しかし、今春に再婚したときは「前の奥さんの一周忌も過ぎてないのに、おかしい」と多くの知人たちから批判的な意見が出たという。父親はある宴会で手の小指を立てながら「この件ではご迷惑かけました」と知人たちに頭を下げていた。

 一方、Aの弁護人は31日、「女子生徒が父親の再婚に反対していたとする報道は事実と異なる」などとする見解を、文書で発表した。声明で弁護人は、接見で直接聞いた話として、Aは父親の再婚には賛成しており「実の母親が亡くなって寂しかったので、新しい母親が来てうれしかった。父親のことは尊敬している」と話したとした。

 しかし再婚後、Aは金属バットで父親を殴っている。別の知人は「頭蓋骨が陥没し、歯がボロボロになったそうです。手加減が一切なく、娘さんには殺意があったのでしょう。父親は人脈を使って知り合いの病院で治療したみたいで、大ごとにはしないようにしていた。普通の病院ならそうはいきません」と話す。

 また、Aが小6のときの漂白剤混入事件について「父親は『学校の管理が悪かったんじゃないか』と言っていました」と前出の知人。

 精神科医がAを診察できたのは、父親の了解があったからにほかならない。とすれば当然、医師は児童相談所だけでなく父親にも“Aの危険性”を指摘しているはずだ。同時に、一緒に住むとAの殺意が強まるおそれがあるため「しかるべき施設に入れるべき」という話も出たとされる。しかし、父親はAに一人暮らしをさせた。

「(自分が)バットで殴られたのに、娘を一人暮らしさせるなんておかしい」(同)。精神科医の忠告も無視したのか。
 前出の30年来の知人男性は「今度、あいつに会ったら、『一生、娘を支え続けることが償いだぞ』と言ってやりたい」と力なく話した。父親が娘としっかり向き合ってさえいれば凶行を止められたかもしれない。そう考えると愛和さんがあまりにかわいそうだ。