なぜ、謝罪の言葉が出ないのか? 東京・三鷹市で昨年10月、元交際相手の高校3年の女子生徒(18=当時)を殺害したとして殺人罪などに問われた無職、池永チャールストーマス被告(22)の第3回裁判員裁判が24日、東京地裁立川支部で開かれ、被告人質問が行われた。同被告は殺害に至った心境を語ったが、遺族への謝罪は「共感はできないので言える段階ではない」と拒否。その精神状態を専門家が証言台で分析した。

 池永被告は22日の初公判と同じく、紺色に白いラインの入ったジャージー上下に紺色のサンダル姿で入廷。
 落ち着きはなく、傍聴席や法廷内をキョロキョロと見回した。

 殺害に至った経緯について池永被告は「(昨年7月中旬から)彼女を失った苦痛から逃れるために殺害を考えた」と語った。

 弁護側より、生徒の父から関わらないよう注意された後、しばらく連絡を取らなかった期間があったことを問われ「脅してまで関係を続けるのはおかしいと思い、忘れようとしたが(気持ちが)積もっていった」と説明。殺害に関しては「心の整理ができておらず混乱しているが、後悔している」とした。

 現在の心境については「彼女が非常に好きだったので、直面した死の恐怖、苦しみや痛みを共感してみたい」と語った池永被告だが、いまだ遺族に謝罪もしていない。「(遺族が)苦しんでいることは想像できますが、共感はできないので、謝罪の気持ちはまだ抱いていない」と今に至っても謝罪を拒否している。

 証人尋問では、弁護側の依頼で池永被告の心理鑑定をした大学教授が「慢性的なネグレクト(育児放棄)などの不適切な養育環境が事件に影響した」と証言した。

 フィリピン人の実母は池永被告の父と離婚後、複数の男性と交際してきたが、DVや生活の不安定さなどから、池永被告が小学5年~中学3年の間に7度引っ越し。池永被告は母の交際男性から殴るなどの暴力、言葉による心理的虐待を受けていた。別の交際相手は母親に激しい暴力を振るい、池永被告がいる部屋のすぐ隣で母親とセックスを始め、あえぎ声を聞かされながら育った。

 交際中に撮影した生徒の裸体を含む画像を事件前後にインターネットに公開し“リベンジポルノ”と報じられたことに、池永被告は「(復讐ではなく)付き合った事実を半永久的に残すためだった」と釈明した。

 前出の大学教授は「被告は他者視点が低く、そこまで考えられない。もし、被害者の名誉まで考えられるのだとしたら、この裁判でも謝罪とか、遺族に手紙を書くとか、やっていると思う」と述べた。遺族に謝罪していない点も「罪悪感を持てていない」と指摘。育ち方によって、人は“罪悪感欠乏症”になるとの解説だ。傍聴席にいた被告の実母は「後ろの方で証人尋問を傍聴していましたが、ムスッと仏頂面をしたかと思えば、時折笑ったりしていた」(傍聴者)という。判決は8月1日に下る。