残党の不穏な動きはなかったが…。オウム真理教による都庁郵便爆破事件で、殺人未遂などのほう助罪に問われた元信者菊地直子被告(42)の裁判員裁判の判決公判が30日、東京地裁であった。杉山慎治裁判長は懲役5年(求刑7年)を言い渡した。無罪を主張していた弁護側は控訴する方針。今春にはオウム残党と思われる者が「聖戦が起きる」と発言していたが、どうやら危機は回避されたようだ。その代わり、裁判の裏舞台ではゾッとする光景も見られ――。

 爆弾の原料となる薬品を運搬した菊地被告。テロに加担する自覚を持って行動したかが裁判の争点だった。杉山裁判長は「犯罪に巻き込まれた感もあるが、幹部からの指示通りに動いた」ことで、結果的に「テロの実行のために大きな貢献があった」と断定した。判決を受けた被告の表情は傍聴席からは見えなかったが、その口元は不服そうにモゴモゴと動いていた。


 実は判決の裏側には、かなり不穏な空気が漂っていた。あるオウムウオッチャーは、先に行われた元教団幹部平田信被告の裁判での出来事を語る。


「判決が出た3月7日に地裁のロビーにいたら、私の隣にいた男性が『このままでは…。ジハードが起こっちゃうぞ!』とつぶやいたんです」


 平田被告への判決は懲役9年。求刑12年より少ないが、同じ事件で裁かれた元信者たちよりは厳しい内容だった。


「ジハード」とは、宗教用語で「聖戦」のこと。この言葉をつぶやいた人物は何者か。ウオッチャーは「アレフの関係者。おそらく信者だと思います。アレフに関する裁判で何度か顔を見ていたので知ってます」と証言する。


 アレフとは言うまでもなく、オウムの後継教団のことだ。その団体の人間が「聖戦が起きる」とつぶやいていたとは聞き捨てならない。平田被告の裁判時期には、すでに菊地被告の裁判が予定されていた。それ故、今回の裁判で何が起きるのか懸念されていたのだ。結果的に何も起こらず、関係者らはホッと胸をなでおろす。


 そんな中、平田被告の裁判で裁判員を務めた人が菊地被告の裁判に訪れていた。裁判日程も後半に入ったころ、3人の元裁判員女性が連れ立って現れた。3人は法廷の前で始終ペチャクチャとおしゃべりをやめない。


 平田裁判を傍聴した人にとっては、何度も見て覚えていた顔だ。


「マジでうるさいから、聞きたくなくても話の内容が耳に入った。『○○さんと××さんが飲みに行ったらしいよ』とか『あの2人デキてるって』とか、居酒屋で話せよ!ってことばかり。傍聴者はちゃんと見ている。こんなヤツらには絶対に裁かれたくないと思った」(ある傍聴者)


 別の日には他の元裁判員も傍聴に来ていた。本紙の取材に「平田に9年間の懲役を下した責任は大きい。傍聴側からオウム裁判を見ておきたかった」とマジメに答えていた。不謹慎な態度の者ばかりではないが、品性が問われそうな裁判員もいるというわけだ。