虐待問題を取材していたはずなのに…。朝日新聞千葉総局の記者が、記者会見で大暴れしていたことが、本紙の取材で判明した。5月20日に千葉県庁で行われた「千葉県社会福祉事業団問題等第三者検証委員会」の後に開かれた会見で、この記者は酔っ払った状態で出席。県職員に食って掛かるわ、机を叩くわなどして会見を台無しにした。その後、記者は謹慎したという。関係者は「虐待問題に関する会見で記者が県職員を“虐待”するなんて…」とあきれ、大騒ぎになっている。

 問題が起きたのは、千葉県庁で開かれた5月20日の同委員会終了後だった。会議が非公開ということもあり、午後10時20分ごろから内容を説明するための記者会見が設けられた。問題の県政担当の朝日記者は酒のにおいを漂わせながら会見場に現れ、同委員会の事務局の県職員を「無能!」と何度も繰り返して罵倒し始めたという。

 この記者は、ある程度の経験を積んだ50代ベテラン記者。そんな人が、県職員に向かって人格を否定するような暴言を吐くだけでなく、机を叩くなどして、会見をぶち壊してしまった。

 酔っ払いが会見に紛れ込んでいては、質疑応答どころではないだろう。事情を知る関係者は「会見までの待ち時間に酒を飲んでいたようです。泥酔していて、かなりしつこく県職員に絡んでいたといいます。まるで独演会のようだったとか」と明かす。

 もちろんこのままでは済まされない。朝日新聞社は事情を把握すると、この記者を取材現場から外し、謹慎させた。朝日関係者が県に謝罪に出向き、会見に出席していた他社にも事情を説明するなど対応に追われた。

 この一件で後味が悪いのは、虐待問題が関係していることだ。同検証委員会は、知的障害のある児童らが入所する「袖ヶ浦福祉センター」で起きた虐待事件の再発防止のために設置されていた。

 昨年、同センターに入所していた少年(19=当時)がセンター職員(当時)から虐待を受けて死亡。職員らは千葉県警に傷害致死の疑いで逮捕された。これまでの調査で、職員らが複数の入所者に対して日常的に虐待をしていたことが明らかになっている。千葉県は事件を重く受け止め、森田健作県知事(64)が同センターを視察している。森田知事は「しっかり検証する必要がある」と決意を述べていた。同委員会も1月17日から会合を開き、今回は8回目だった。

「虐待問題を取材する記者が県職員を“虐待”するなんて…と話題になっています」(前出の関係者)。確かにシャレにもなっていないだろう。

 千葉県庁広報担当者は「誰から聞いたんですか? 会見の内容に関わることではありませんし、会見自体が私どもと記者クラブの共催になっています。そういう立場もあるので、コメントは控えさせてください」と話す。県はあくまで被害者だが、記者クラブとの関係から詳細を明かさない方針のようだ。

 一方、当の朝日新聞社の広報部は書面で「ご指摘の記者会見に当社の記者が出席し、不適切な発言などで会見の進行を妨げたのは事実です。関係者におわびするとともに、本人には厳重に注意しました。今後このようなことがないように記者教育の徹底に努めます」と事実関係を認めるコメントを出した。

 当の朝日記者は謹慎を経て、現在は関係者への謝罪回りをしているという。

「深く反省している」と説明しているというが、この際、悪い酒グセが直らないようなら、禁酒した方がよさそうだ。