謝罪は受け入れられるのか? パソコン遠隔操作事件で威力業務妨害などの罪に問われ否認していた元IT会社社員の片山祐輔被告(32)が、ジャーナリスト江川紹子氏(55)に謝罪している。行方不明だった片山被告は20日に姿を現し、すべての犯行を認めた。とはいえなぜ江川氏に謝罪なのか。実は、片山被告は“自演”した16日の真犯人メールで、江川氏を下品な言葉で誹謗中傷していた。江川氏といえば、片山被告の主張を多く発信し擁護派と見られていたのに、だ。本紙は江川氏を直撃、胸中を聞いた。

 20日午前、1人で東京地裁の会見場に現れた佐藤博史弁護士は「昨日、片山さんから電話があった。『先生、すいません。自分が犯人です。全部自分がやったんです』と。非常に驚いた」と完オチの瞬間を語った。

 19日午前から音信不通になっていた片山被告は死に場所を求めて、都内の公園や高尾山を缶酎ハイ片手にさまよったという。ベルトやネクタイで首つりを試みたが、できなかった。また、ある駅のホーム下に入り込み、電車が来るタイミングで飛び込もうともしたと話している。

 20日になり、佐藤氏と再び連絡を取り、弁護士事務所へ。その場で洗いざらい語った。これまで片山被告は無実を主張し、佐藤氏も弁護に奔走。公判は片山被告にとって悪くない流れになっていたのは間違いない。ところが、すべてがうそだった。

「片山さんは『申し訳ない』と言っていた。でも、裏切られたという否定的感情は湧きませんでした。『これからは国選弁護士でやる』とも言っていたが、『私はあなたを見捨てることはしない』と言った。弁護士をやっていれば、こういうことはありうることだ」(佐藤氏)

 片山氏の謝罪は佐藤氏だけでなく、誤認逮捕された4人の冤罪被害者に対してもあった。さらに、佐藤氏は「江川さんにも非常に申し訳ないと言っていた。具体的な名前(が挙がったの)は江川さんだけだった」と明かす。江川氏はこの事件について情報発信を続けており、ネットでは擁護派の代表とされていた。それゆえの謝罪と思われる。また、16日の真犯人メールのタイトルに「江川紹子の閉経マンkにVXガス注射してポアする」(原文ママ)と記述。かなり下劣な表現で誹謗中傷していたのだ。

 片山被告の謝罪をどう受け止めるのか。江川氏は「私に対しての謝罪は佐藤さんの気持ちもミックスされての表現で、彼自身がどう思っているのかは分かりません。なのでペンディングにしようかと。だって、私に対して悪いと思う必要はないから。メールのタイトルについては、失礼ですよ(笑い)。そこは謝ってもらわないと」としばらくは保留にするという。

 というのも、片山被告の精神状態が問題になっているからだ。16日の真犯人メールについて、片山被告は同日夕の会見で「真犯人はサイコパスだ」と指摘。このことについて20日に「実は自分がサイコパスなんです。うそが平気でつける」と佐藤氏に話したという。

「これは私の想像ですが、彼は誰かに申し訳ないとか思う感受性が弱いのではないか。会見やインタビューのときも、彼が感情をあらわにすることはなかったですよね。感情を持つことが苦手なのかもしれない」と江川氏は指摘。

 片山被告サイドの情報発信を多くしたのは「彼が犯人だというクロ情報ばっかり出ているから、彼らが言っていることもちゃんと出さないと世の中の情報のバランスが悪いのではないかと思いました。私は弁護士ではないので、彼が無実と叫んだことは一度もないし、あなたのことを信じてますとも言っていません」と必ずしも擁護ではなかったと説明。

 江川氏は今後の片山被告についてこう話す。

「精神鑑定をしっかりやって、なんでこんなことをしたのかを源から明らかにしないといけない」

 片山被告が江川氏に本心から謝罪する日は来るのか。