北海道警の官舎や商業施設などで起きた札幌市の連続爆発事件で道警は27日、事件を知ると思われる50代女性の事情聴取を前日に続いて行った。過激な事件で警察が重要参考人とにらんだ人物が女性とは驚きだが、本人は関与を否定しているという。警察OBは「これは単独犯による事件ではない。犯行は複数で行われた」と指摘。複数犯説の根拠となる3つの理由とは…。

 今年1月、札幌北署の駐車場で発生したカセットガスボンベ爆発事件に始まり、札幌市北区内で大型量販店や警察官舎なども含めて同様の事件が計5件起こった。警察や地元メディアには新たな犯行を予告する文書が届き、同署署員の実名入りで強い警察批判が書かれていた。

 警察と過去にトラブルを抱えた結果、強烈な恨みを持つ者による犯行であるとみられていたが、まさかその重要参考人が女性だとは誰もが予想外だったろう。

 神奈川県警の元刑事で「『刑事ドラマあるある』はウソ?ホント?」の著者で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は「はじめは任意同行を拒否していたが、なんとか説得して話を聞いたらしい。26日の聴き取りでいったん帰して、27日にまた再開した」と語る。女性は犯行への関与を否定しているという。

 事情聴取と並んで家宅捜索も行われている。逮捕せずに家宅捜索を行うのは可能だ。ただし、いくつか「カタい」と思われる条件がないとできない。今回の事件であれば「警察とトラブルのあった過去を持つ。爆発のあった現場の防犯カメラに似たような人物が写っていた。爆発や犯行声明に関する品物を購入した履歴がある。これらの条件に複数合致したのだろう」(小川氏)

 だが「ガサをかけて何も物証が出なければ逮捕は難しいだろう」とも。しかし、小川氏は今回の連続爆破事件が単独犯によるものと考えにくいと語る。理由はいくつかある。

 第1に「4度目の犯行は、ホームセンターの男子トイレが爆破された。女性でも男装すれば男子トイレに入ることはできるが、目立つので変装は避けるはず」。今回の犯行は「次は警察を狙う」と予告しておきながら、民間商業施設を狙うなど、犯人は逮捕を逃れるような“作戦”をとる慎重派だ。変装しないとなれば、男が男子トイレに侵入したと考えるのが自然だ。

 2点目は、実行役と見張り・運転役に役割分担していた可能性があるという。「3度目の犯行はイトーヨーカドーの立体駐車場だった。徒歩でここに向かうのは不自然。自動車を利用した犯行と考えられる。また、ほとんどの犯行が夕方の人通り多い時間帯に行われている。それにもかかわらず、目撃情報が全くない。見張り役がいてもおかしくない」(同)

 3つ目の理由は「2度目の犯行が行われた量販店の防犯カメラに複数の不審人物が写っていたらしい」こと。これらの理由から複数犯行説が提唱されるわけだが、仮に女性が事件に関与していた場合、仲間はどんな男性なのか。「闇サイトで募集したような相手ではなく、かなり固い絆で結ばれている間柄。夫婦や兄弟や親子や恋人や親友などが考えられる」

 2人が相当に深い関係でなければ、事件を重ねるごとに片割れが「そろそろ犯罪はやめよう」と言い出しかねない。それを5件も繰り返したのだから、2人の意思は通じ合っているのだろう。

 小川氏は「今回、女性を逮捕できなくても、仕切り直して男をオトすかもしれない。警察に動きがあったことで、男も証拠隠滅に動いているはず。警察がどこまで情報を握っているかが勝負だ」と述べる。つながりの強い共犯者がいると、単独犯と比べて、警察の取り調べにペラペラ話すことはないという。道警はまさに今が正念場だ。