埼玉県警川口署は8日までに、書店の本に火をつけたとして建造物侵入と現住建造物等放火未遂の疑いで、住居不定の無職の男(54)を逮捕した。

 6日午後7時ごろ、川口市の書店で、奥の本棚に陳列された文庫本にライターで火をつけた疑い。ポスターに火が燃え移っているのを男性店主が発見。すぐに消し止めたが、その隙に容疑者は逃走。約100メートル離れた場所にいたところを110番通報で駆けつけた同署員に発見された。

 あわや店を燃やされるところだった店主夫人は「万引きはともかく、放火なんてされたのは初めてです。本当にやめてほしいですよ。損害を受けたくないです」と怒りを隠さない。

 容疑者は白い帽子に白いトレーナー姿だった。「棚に入った文庫本の上に火をつけたティッシュを乗せたんですね」(同夫人)。その文庫本は人気小説だった。「双葉社から出ている『居眠り磐音 江戸双紙』でした」と話した。

 同作は2002年から現在まで45作も続く佐伯泰英氏による時代小説の人気シリーズだ。作品を題材とした漫画や、NHKでドラマ化もされた。容疑者は警察の調べに「日ごろのうっぷんを晴らすために火をつけた」と供述している。

 思い出されるのは人気バスケ漫画「黒子のバスケ」をめぐる一連の事件だ。作品と作者に恨みを持った男が、同作の関連イベント会場や複数の企業を脅迫した。

 今回の事件が「居眠り――」に恨みを持ったうえでの犯行かは不明。同署副署長は「取り調べてみないとわからない」と語る。同夫人は「長いこと店をやってますけど、犯人は初めて見る顔でした。本に恨みがあったんでしょうか」と心配そうに話した。