暮れの恒例行事「今年の漢字」を発表したり、検定ブームのさきがけとなった「漢字検定」を運営している公益財団法人「日本漢字能力検定協会」の内紛劇に進展があった。漢検を追放された大久保親子が民事訴訟で勝訴していたのだ。

 漢検といえば、2009年に創業者の大久保昇元理事長と浩元副理事長の親子が、約2億6000万円の損害を漢検に与えたとして背任容疑で逮捕された。大久保親子は在任中、それぞれ社長を務める同族企業4社と総額66億円の取引をしたことなどが利益相反取引に該当するとして、漢検から追放された。大久保親子は刑事、民事の両方で訴えられた。

 民事の方では、利益相反取引で損害を与えられたとして、漢検は27億円の損害賠償請求に絡んで、大久保親子の関連会社「オーク」の資産を差し押さえ処分していた。しかし、大久保親子側はこれに異議申し立てした。

 昨年12月25日、大久保親子が勝訴し、京都地裁は「仮差押決定を取り消す旨の決定」を下した。漢検側は大阪高裁に抗告。現在、争点整理の最終段階で書面のやり取りが行われているという。

 法曹関係者は「京都地裁は会社法350条の法律的解釈により、損害賠償請求の根拠がないとして、仮差押を外す決定を下したことになる。オークは刑事事件の対象となっている会社ではありませんが、漢検が各会社との取引について損害が出たと主張する理由は一緒であるため、今後各社の仮差押についても、同様の判決が出ると思われます」と指摘する。

 この民事の判決は、大久保親子が背任罪で有罪判決を下された事件の根幹に関わるかもしれない。

「刑事事件は『関連会社との取引によって損害が発生した』ことを前提とする背任ですので、背任の前提がなくなってしまう可能性があるのです」(同)

 民事では、漢検と同族企業の取引が正当な取引と認められたことになった。刑事では、昨年3月の背任罪に問われた大久保親子の控訴審判決で、大阪高裁は両被告に懲役2年6月を言い渡した1審京都地裁判決を支持し、両被告側の控訴をいずれも棄却した。

 同年9月に大久保サイドが控訴趣意書を提出した後、進展はない状況だという。