「ロンドンブーツ1号2号」田村淳(40)も「どうなるんだろうか…」と思わずツイートした、インターネット上の仮想通貨ビットコイン(BTC)を取り扱う世界最大級取引仲介所の「マウントゴックス」(MG、東京)の取引停止と取り付け騒動。衝撃は東京発で一気に世界中に広がり、MGは2月28日に民事再生法の適用を申請したと発表した。このMGのパンクには、仮想通貨のメジャー化を避けたい大国の陰謀や同業他社による仕掛けなど諸説が飛び交う。次世代通貨として、メディアでも喧伝されたBTC狂騒曲の行方は――。

 この問題が広がり始めた2月26日、「俺のビットコインどうなるんだろうか…」とつぶやいた淳。先週には公式ウェブマガジンで「ビットコインがほしい!」と題した書き込みもしており、実際に購入した可能性がある。

 BTCはネット上で流通する仮想通貨で、国や中央銀行の規制を受けないのことを売りに、発行上限を定めることで、価値を生んでいた。2009年前後に正体不明の日本人とみられるサトシ・ナカモトが誕生させたといわれ、投機マネーの流入で、一時は価格が1年で100倍以上に跳ね上がった。

 ところが2月になって、国内外で100万以上の口座を持ち、世界一の取引仲介所だったMGが、システム上の問題から取引を制限し、同26日には全取引が停止。MGの管理費用は400億円にも上るとみられ、BTC全体量の約6%に当たる。ネット上には、MGのリークとみられる内部資料が流出し、債務超過が指摘されている。もともと実態のない仮想通貨は、金融商品取引法の規制対象外で、倒産しても救済措置は適用されない見込みだ。

 MGのシステム問題は、サイバー攻撃にさらされ、2年間に約75万BTC(約375億円)が、何者かに盗まれるか、データが消去されたとみられている。

 IT関係者は「既に中国やロシアではBTCの取引が禁止され、米でも昨年、BTCを使った闇サイトでの薬物売買者を摘発したように、当局が規制対象にしようとしている。BTC取り扱い最大手のMGの問題は、そのままBTCの信用失墜につながる。単なるハッキング被害ではなく、背後には自国通貨を脅かす存在となってきたBTCを快く思わない大国の思惑が見え隠れします」と語る。

 他のBTCを取り扱う仲介業者は「騒動はMG自体の問題。BTC自体の価値は揺るぎない」と火消しに躍起だが、BTCはもはや存亡の危機に立つ。一方で他の仮想通貨が、次なる主流の座を虎視眈々と狙っている。

「BTCのライバルといわれる仮想通貨Rippleを手がけるのは、もともとMGの創業者。BTCに見切りをつけ、新しい仮想通貨を始めており、MGのシステムにも精通している。今回の件でも何かしらの事情を知っているのではないかと言われています」(同)

 世界的金融危機を追い風に多くの仮想通貨がひしめくのは、ITベンチャー同様に“創業者利益”を狙っている実情もある。BTCの創業者といわれるナカモト氏は100万BTC(約500億円)、今騒動の張本人であるMGのマルク・カルプレスCEOも20万BTC(約100億円)を所持しているといわれる。

 ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「仮想通貨というアイデアは、面白いが、国の発行する通貨と違い信用の担保がない。今回のような事件が起きるとやはり資産としては、現実のお金の方が安心となる。仮想通貨の仕組みは、もともとハッカー(高度なプログラミング技術者の意)が作り上げたもので、ゲーム的要素の延長線上のところがある。不正侵入でデータがゼロになるリスクや恣意的な操作ができる可能性はある。将来的には、中央銀行や国が介入し安全となっていくが、現時点では、ネットやコンピュータープログラムに自信がない一般人が手を出すには、危険過ぎる」と警告した。

 政府は先月27日、ビットコインを規制対象とするかどうかを検討する意向を表明した。現状は法制度が不備で、犯罪組織に悪用されたり利用者保護に支障が出たりする恐れがある。