東京と兵庫県で、女性ばかりを狙った通り魔事件が多発している。昼夜を問わず、すれ違いざまに殴られたり、背後から近づいて刃物で刺されたりと、歩き慣れた道でも決して安心できない世の中になってしまった。そこで、護身術の専門家に女性にこそ必要な「身を守る心構え」を聞いてみた。

 27日午後1時半ごろ、東京都多摩市の路上で、女性3人(77、67、52)が20歳くらいの女に次々に拳で頭を殴られて、軽傷を負う事件が発生した。

 また、同日夜には、兵庫県神戸市と尼崎市でも通り魔事件が発生。神戸市では大学3年生の女性(21)が路上で何者かに背後から刃物で刺され、腰から腎臓に達する傷を負う重傷。尼崎市では帰宅中の専門学校生の女性(20)が、自転車の男にすれ違いざまに殴られ転倒し、そのまま顔や胸などを十数回殴られ鎖骨を骨折する重傷を負っている。いずれの事件も犯人は逃走中だ。

 被害者はいずれも非力な女性。路上でいきなり襲われた場合の防衛手段はないのだろうか。全国で護身術教室「功朗法」を開く横山雅始氏は「女性は本格的な護身術の練習をしないまでも、最低限のリスクコントロールをしておくことが重要です」と指摘する。

「女性が夜道を1人で歩く場合は、真っすぐ前を見るのではなくアゴを引いておきましょう。正面を見ていると、視界が160度に狭まり、真横に人が来られても気づかない。うつむくことで斜め後ろにいる人も見えるようになるんです」

 こうすることで後ろを何度も振り返ることなく、安全確認ができるというわけだ。

 また、正面から襲い掛かられた場合は、とにかく距離を保つことが重要だ。

「自分の目の前120~150センチの“個体間距離”に相手を入れないことです。この距離に相手が入ってしまうと、腕をつかまれたり口を塞がれたり、飛びかかられたりと何でもできる。男が正面から近づいてきたら、後ずさりをしながらでもこの距離を保ち、大声を出しましょう」(同)

 ストーカーなど個人的な恨みが動機の場合、いかなる手段を使ってでも襲ってくる。

 しかし、単なる通り魔の場合はスキを作らないことで危険性はかなり下がるという。

「通り魔は大声を出しそうだったり、油断がないなど、見るからにリスクが高そうな女性を狙わないものです。近づいても『あんた何よ!?』などと冷静そうで怖がっていないそぶりをすると、逆に大声を出さないと判断されやすい。怪しい男がいたら、必要以上に周りを見渡したり、怖がっている表情を作った方が大声を出しそうで襲われにくいでしょう」と横山氏。

 女性にはぜひ知っておいてもらいたい知恵だ。