オウム平田被告初公判で異例の「NHK番組証拠採用」

2014年01月18日 08時00分

 悪いのは“オウムの教え”!? 一連のオウム真理教の事件で特別手配され、2011年12月31日に出頭するまで17年間の逃亡生活を続けてきた元教団幹部平田信被告(48)の裁判員裁判初公判が16日、東京地裁(斉藤啓昭裁判長)で開かれた。目黒公証役場事務長の仮谷清志さん(68=当時)拉致事件など、3つの事件についての公判だ。週明けからは異例となる死刑囚の証人尋問も予定されているが、初公判でもNHKの番組が証拠採用され、NHKが反発する異例のスタートとなった。

 逮捕時、ボサボサの茶髪にヒゲ面だった男は一変した。側頭部を刈り上げるオシャレなツーブロックの髪形で登場したスーツ姿の平田被告は「ゴルゴ13」のような濃い眉毛と鋭い目つきが印象的だ。

 審理される事件は(1)仮谷さん拉致事件(逮捕監禁罪)、(2)宗教学者の元自宅マンション爆破事件(爆発物取締罰則違反罪)、(3)教団施設への火炎瓶投げ込み事件(火炎瓶処罰法違反罪)の3つだ。(2)と(3)は教団への強制捜査を回避するための“自作自演事件”とされる。

 弁護側は(3)を認めたが、(1)と(2)は被告が計画を知らなかったと主張。(1)は共同正犯ではなく、ほう助、(2)は無罪であるとした。証言台に立つ平田被告は検察の起訴事実説明が終わると、弁護人席に座らせようとする裁判官に「あの…ひとつだけ…」とさえぎって話し始めた。

 180センチ超の長身をピンと伸ばして「今日この日を迎えるまでに長い時間をかけた。被害者並びにご遺族、社会全体、私の関係者、すべての人に多大なるご迷惑をかけたことをこの場を借りておわび申し上げます」と謝罪した。聞き取りにくいくぐもった声で、不気味なまでに感情は見えない。

 オウム関連で初となる裁判員裁判だが、6人中5人が女性。弁護人は裁判員らに「イメージでもネットでもニュースでも噂でも」なく、裁判の証拠から「まっさらな目で」判断するよう求めた。

 元オウム信者へのネガティブな印象を払拭しようとする弁護側の戦略は、証拠として申請し認められたNHKの番組にも表れていた。1988年放送の「おはようジャーナル」の特集「若者が占いや瞑想や超能力や宗教になぜひかれるか」が11分間にわたって法廷に上映される異例の展開に。

 番組はオウム真理教の若者の生活に密着。傍聴席には公開されなかったが、映像には20代前半の平田被告と井上嘉浩死刑囚が食事の準備をする様子も含まれていた。

 当時の社会は新興宗教にアレルギーがなかったことを弁護側は示したいようだ。ひいては「純粋な青年だった」(弁護人)平田被告もオウムの教えによって悪事に引き込まれてしまったとでも言いたげに聞こえる。いきなり同情をひく“お涙ちょうだい作戦”なのか。

 だが、NHKは放送目的でない映像使用に反発し、証拠としないよう求める方針だ。

 唯一、感情が見えた瞬間があった。被害者参加制度を利用して証言台に立った仮谷さんの長男が「平田被告の長い逃亡生活の苦しみは遺族の苦しみに通じるものがある」と発言。思わぬ同情を受けた平田被告は、このときだけは5秒ほど目をつぶっていた。長男の「ただただ真実を知りたい」との問いかけに、3月上旬まで続く公判で平田被告は真摯に答えるのだろうか。