この時期になると、初詣客が投げた神社や寺のさい銭を狙った泥棒があちこちに現れる。四国は徳島で3日、不届き者が逮捕されたが、神社関係者によると、実はさい銭ドロは日常茶飯事という。分かっていても盗まれる――神社仏閣サイドと懲りないさい銭ドロとの闘い、そして小銭を盗まれるよりもツラい被害の実態を追跡した!

 徳島県警は3日正午すぎ、徳島市内の神社でさい銭箱から金を盗んでいた住所不定の男(53)を窃盗容疑で現行犯逮捕した。徳島北署によると、男を捕まえたのは休暇で初詣に来ていた県警地域課の男性警部補(48)。警部補はさい銭箱の中から小銭を取り出してポケットに入れている現場を目撃した。

 警部補が職務質問をすると逃走したが、すぐに取り押さえられた。さい銭5551円を盗んだ疑いだ。どんな事情があったにせよ、とりわけ正月早々にやってよいことではない。

 ところが神社関係者によると「正月どころか、さい銭ドロは日常茶飯事です」というのだ。

 東京・足立区の神社の神主が匿名を条件に話してくれた。「さい銭ドロは表立って事件にならないけど、ほぼ毎日のように現れますよ」。犯人のほとんどがホームレスや中高生の悪ガキだという。神主によれば、泥棒たちはさい銭箱の巡回を日課にしているという。見つけたときに「こら~!」と注意すれば、来なくなるが、その効果も1~2か月にすぎない。

「あまり大きな声で言えませんが、少々の泥棒には目をつぶっています。さい銭泥棒に特化したプロにやられるのならまだいいのですが…」

 寺社仏閣が一番嫌うのはさい銭箱を破壊されることだ。「プロはさい銭だけを上手に抜き取っていく。でも、悪質な泥棒は南京錠を付けても大きなハサミで切断する。ひどいときはさい銭箱を叩き壊されるんです。そうすると修理費用で1万円以上もかかる。だから500円くらい盗まれたところで目くじらは立てません」

 大きな出費と手間を考えれば、小さな痛手はスルーしてしまうしかないのだ。対策も立てようがない。「東京の明治神宮など大きな所には警備員がいたり防犯カメラもあるけど、我々のような小さな神社では警備員を雇うほうが高くつく」と苦笑する。

 不思議なこともあるという。「さい銭泥棒は神社より、お寺さんでよく捕まるんです。仏教は因果応報。仏罰は早く訪れるのです。でも神様の世界は人をとことん許すのです。本人の反省を待って、待って、待って、それでもダメならまとめて最後に罰をドーンです」

 神主は今回の事件の男が、たまたま捕まってしまった人間だとは考えない。さい銭泥棒が社会に横行しているため「この男を見せしめとして罰を与えたのです」。

 前向きに捉えれば、正月から神様に目をつけられた人間ということで、更生に期待したいところだが…。