サル70匹大脱走「金網切断」犯の目的 間違いなく街のパニック狙った愉快犯

2020年06月12日 16時00分

 犯人は何がしたかったのか? 千葉県富津市が管理する高宕山自然動物園で、飼育されていたニホンザルのおりの金網が何者かによって切断され、約70匹が10日朝までに脱走した騒動では、いまだに多くのサルが逃げている。市は警察に被害届を提出。富津署は休園していた園に外部から侵入した者が穴を開けたとみて、器物損壊の疑いで捜査中だ。いったい誰が、何のために…。

 おりの金網フェンスの地面から高さ150センチほどの場所に直径約30~40センチの円形状の穴が開けられ、穴の下には切断された金網の破片が残されていた。刃物を使って切ったとみられる。園は山の麓にあり、脱走したサルの多くは敷地内にいるという。

 園はニホンザルの生息地として国の天然記念物に指定されている高宕山に隣接している。1959年に地元の観光協会が開設し、現在は市が管理している。

 同園からサルが脱走するのは今回が2度目だ。昨年9月に千葉県を直撃した台風15号の影響で園を囲む柵が倒壊し、一時、ニホンザルが放し飼い状態になったが、ほぼすべての捕獲作業を終了し、仮設のおりを設置していた。それが破られたのだ。

 餌付けされているサルは、餌の時間になるとおりの近くに集結。11日の餌の時間にも、敷地内の建物や、おりの周辺にいたサルたちが集まってきていた。

 園では、餌付きの箱形のワナでサルの捕獲作業を行っており、現在は約10匹ほど捕まえている。休園中で、けが人などは今のところ報告されていない。

 同園が金網切断という犯罪被害を受けるのは、今回が初めて。しかし、富津市観光課の担当者は「園内のサルは餌付けしているのでおとなしい。逃走しても、山から遠い都会まで逃げるとは思っていない。また、動物園の敷地外には野生のサルが生息しており、近隣住民もサルとの生活に慣れているのでは」と大きな不安はなさそう。

 餌付けされているサルなので園から遠くには行かない可能性が高いが、中には新天地を求める“はぐれザル”が出ないとも限らない。仮にそんなサルに遭遇したらどうすればよいのか?

 同担当者は「サルの性質上、目が合うと威嚇してくる可能性がある。もしサルと遭遇したら、目を合わせないようにしてもらえたら」と注意を促す。

 それにしても金網切断犯は何が目的なのだろうか。“動物の権利”を主張する思想犯なのか? それとも別の目的か?

 犯人像について犯罪心理学者の北芝健氏は「サルという“道具”を使った愉快犯に間違いない。犯人は金網を切ってサルを逃がす時に『餌がないと、サルは生きていけない。餌を求めて、街へ出るだろう』という考えが浮かんだはず。餌を求めて、サルが都会へ出た場合、人を威嚇するという発想は容易にできただろう」と分析。サルの性質を利用し、街をパニックに陥れようと試みた愉快犯による犯行なのだろうか。しかしその場合、餌付けされているサルは思惑通り散り散りには逃げず、園内にとどまっている。

 北芝氏は「サルの行動は未知数なので、自分の思い通りにいかないということも頭の中に浮かんだはず。いずれにしろ、サルを逃がすことで、街にいる人々をパニックに陥れたかったのでは」と話した。地元はパニックになっていないようだが、連日の報道で“サル逃亡事件”は日本中の注目を集めてはいる。愉快犯であるならば、犯人の目的の一部はかなえられてしまったのか…。

 富津署は、詳しい状況を含めて捜査をしている。犯人像や、動機の解明が待たれる。