林真須美死刑囚の民事訴訟でヒ素論争 鑑定結果めぐる地裁の判断は

2020年02月01日 16時00分

林真須美死刑囚

 科学者同士が火花を散らした。1998年7月に起きた和歌山毒物カレー事件で、死刑判決が確定した林真須美死刑囚(58)が、事件に使用されたヒ素の鑑定書の誤りや、鑑定の報告会見が名誉毀損に当たるとして、鑑定を行った中井泉、山内博両鑑定人に対し計6500万円の損害賠償を求めた訴訟の口頭弁論が31日、大阪地裁(山地修裁判長)で開かれた。

 林死刑囚は2017年に和歌山地裁に再審請求を棄却され、大阪高裁に即時抗告中。本紙では、作家の山口敏太郎氏による林死刑囚の長男のインタビューで、この訴訟について林死刑囚が「これに負けたら一生出られない」と注目していると報じた。事件における頭髪ヒ素鑑定の問題点を指摘している京都大学の河合潤教授が証人として出廷した。

 河合教授は大型放射光施設「SPring-8」での分析結果は「ヒ素がついていなくても、数値が強くなったりすることがままある」と指摘。中井氏の頭髪鑑定を「精度の悪い測定をしていることにビックリした。ヒ素ではなく鉛と見間違えている」と証言し、鑑定を基礎にした死刑判決について「判決文は中井氏の鑑定によったものだと思うが、全く誤解した判決文だと思う」との見解を示した。

 それに対し中井氏は、「精度が悪いというのは誤解。河合先生は理論家で素晴らしいが、実際に試料を扱ったことがない。私の実験では針の上の1粒の試料でも測定できる」と真っ向から反論した。

 鑑定結果を発表した記者会見については「正確に結果を伝えるのが重要だった。誰かを犯人と決めつけるような意図もないし、発言をした記憶もない」と述べた。山内氏も同様の主張を展開した。

 同事件では、現場に残された紙コップに付着したヒ素と林家の台所で見つかったヒ素、カレー鍋に混入されたヒ素が唯一の物証。鑑定書が誤りと認められれば、高裁に抗告中の再審請求にも影響する可能性があるだけに、地裁の判断が注目される。