“信念なき立てこもり”18時間の動機 ターゲット不在なのに…23歳男の幼稚さ

2020年01月17日 16時00分

 島根県出雲市の運送会社「上田コールド」の本社で、女性社員(40)を人質に立てこもったとして、監禁容疑で現行犯逮捕された千葉市の無職・中尾懐聖(かいせい)容疑者(23)の動機はいったい何なのか。

 親族が、事件発生当日の14日、出雲署に「他人に危害を加えかねない言動がある」と相談していたことが16日、分かった。その中尾容疑者は、女性関係をめぐり元従業員の男性に恨みを抱いているとの趣旨の話をしていたが、男性との面識はなかった。県警は中尾容疑者が一方的に恨みを募らせたとみているが、“ターゲット”不在なのに、約18時間も立てこもるものなのか。

 警視庁元刑事で犯罪心理学者の北芝健氏は「いざ押しかけてみたら、当事者が会社におらず『やりがいがない』ことを悟った。とはいえ、自分に対して示しがつかないし、立てこもればニュースを通して『自分はこれだけ絶望しているんだ』と女性に伝わると考えたのだろう。まったくもってゆがんだ承認欲求で、かなり幼稚でレベルの低い行為だ」と話す。

 最終的には警察の説得に応じ、女性を解放、逮捕に至った。

「例えば、自殺をして悲劇を完遂するというほどの思いつめた領域までいっていない。大それたことをしているが、重大事件を起こしたという自覚は薄いだろう。プロの悪党というのは余計なことは言わないものだが、郵便局強盗を白状しているところにも緩さがみられる」と北芝氏。

 今回の逮捕劇の裏には、県警による慎重な説得工作があった。

「警察(庁)は20年近く前からFBIに行って、FBI捜査官が練ったマニュアルを持ち帰り、日本に合った説得術を作り上げた。それを各県警に伝授して専門家を養成してきた。18時間の説得はイージーな部類になるだろうが、地道な訓練の成果が出たといえる」(同氏)

 捜査員3人でチームを組み、交代しながら1対1で18時間もの間、粘り強く説得した警察の対応を評価。信念のない立てこもり犯だったため、交渉人の説得に陥落したのだろう。