違法脱出ゴーン被告を襲うトランプ砲 イスラム武装組織が潜伏の不穏レバノン命の危険も!?

2020年01月04日 16時00分

ゴーン被告の海外逃亡説を報じた18年11月21日発行本紙2面

“トランプ砲”は聞いてないよ! 4月に初公判が予定され、保釈中だった日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告(65)が昨年末、日本を極秘に脱出し、レバノンに逃亡した事件はいまだ衝撃が収まらない。まんまと逃げられ、司法当局のみならず日本政府も赤っ恥をかいた一方、同被告に思わぬ誤算が浮上した。風雲急を告げる中東情勢に巻き込まれ、レバノンが“安住の地”とはいかなくなってきたのだ。

 ゴーン被告の脱出劇はスパイ映画さながらの情報などが錯綜している。

 昨年12月29日、東京・港区内の制限住宅にバンドを呼び、クリスマスパーティーを開催。終了後、バンドメンバーが持ち込んだ楽器の箱にゴーン被告は身を潜ませた。関西空港に移動し、プライベートジェットで出国し、経由地のトルコ・イスタンブールを離陸後、機内で楽器箱から“脱出”。幼少期を過ごしたレバノンにはフランスのパスポートで何食わぬ顔で入国したというものだ。

 計画したとされるゴーン被告の妻キャロルさんは“楽器箱出国”を「作り話」とし、同被告も2日の声明で「キャロルや他の家族が関与したとの報道は間違い。自分1人で準備した」とした。

 一方、同29日昼ごろ、ゴーン被告が都内の同じ制限住宅から1人で外出した映像が防犯カメラに残っており、その後は帰宅した映像がないとの情報も浮上している。

 昨年3月の保釈の際、ゴーン被告がバレバレの変装で作業員になりすまし、軽自動車に乗り込む様子はコントかと世界中から失笑を買った。どういう経緯にしろ、情けないのは海外逃亡を危惧していた日本当局だ。同被告は金融商品取引法違反、会社法違反(特別背任)の罪で起訴された。過去、同種の裁判ではライブドア事件の堀江貴文元社長が懲役2年6月の実刑で、初公判から最高裁判決まで約5年を要した。

 ゴーン被告は金額が億単位の事件とあって、有罪なら懲役10年以上との見方もあった。65歳の同被告が5年にわたり法廷闘争を繰り広げ、その先に10年以上の懲役刑が待つ絶望の状況だっただけに、逃亡の可能性はあったはずだ。本紙が2018年11月に「囁かれる保釈“海外逃亡”」と報じた通りだ。

 さらに日本―レバノン間には犯罪人引き渡し条約が結ばれていない。日本政府は2日にゴーン被告の身柄拘束をレバノン政府に要請するよう国際刑事警察機構(ICPO)に求めたものの、お手上げ状態も同然だ。

 だが、米大統領が放った“トランプ砲”が、ゴーン被告の計算を狂わせる可能性が出てきた。米国防総省が2日夜、米軍のヘリコプター攻撃でイラン革命防衛隊の「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を殺害したと発表。イランの最高指導者ハメネイ師は報復を表明した。同司令官はイラクの首都バグダッドで空爆された。中東情勢に詳しいジャーナリスト常岡浩介氏はこう解説する。

「ソレイマニ司令官はイランで裏のナンバー2といわれていた実力者で、レバノンにいるヒズボラ(シーア派武装組織)を操っている大親分。爆殺され、実質的な米とイランの開戦状態が始まったといえる。実際戦うのはヒズボラで、戦場がレバノンに波及する可能性が高い。ゴーンにとっては安全な場所ではなくなる可能性が出てきた」

 日産社長時代の08年にイスラエルに入国したゴーン被告の処遇は政争の具になりそうだ。レバノンは政府ポストをキリスト教マロン派、イスラム教スンニ派、シーア派などに宗教・宗派ごとに割り振り、微妙なバランスの下に統治されている。

「レバノンの人間はイスラエルに問答無用で入ってはいけない。(政治混乱や戦争となれば)宗派ごとの緊張関係が崩れる可能性がある。イスラエル入国の過去も厳罰に処すべきとの声が大きくなれば、最大で懲役15年になるとの見方もある。ゴーンは金といろんな力を使い事件化を阻止しようとするでしょうが、それ以上の金持ちや権力者がいますから、陥れようとする動きが出てくるかもしれない」(常岡氏)

 レバノンにいるのは危険とゴーン被告が判断し、市民権を持つブラジルやフランスに高飛びする可能性も出てくるが、脱出劇が国際問題に発展し、日本を出国したようにうまくいく保証はない。

「ゴーンはフランスでも訴えられているし、他の中東国は味方もいれば、敵もいる。金の力で何とかなるのはアフリカ諸国ぐらいしかなくなってくるのでは」(常岡氏)。日本にいて正々堂々と闘っていた方がよかった!?