【性暴力裁判】民事で“逆転判決”終わらない法廷バトル 山口氏が握る?“反撃証拠”

2019年12月19日 16時00分

「勝訴」の垂れ幕を掲げる伊藤氏

 ジャーナリストの伊藤詩織氏(30)が、元TBS記者でジャーナリストの山口敬之氏(53)から性暴力被害を受けたとして損害賠償を求めた民事裁判は、伊藤氏の勝訴となった。刑事事件としては不起訴で“シロ”とされていた山口氏が一転して“クロ”の立場に。山口氏が「法に触れる行為は一切していない。伊藤さんは容疑者だ!」と刑事告訴していたことを明かすと、伊藤氏からは自殺未遂の告白まで飛び出した。

 問題の性行為があったのは2015年4月3日から4日にかけて。伊藤氏は就職先の紹介を受けるため山口氏と会食後、都内のホテルで性暴力を受けたという。警察に被害届を提出し同年6月に山口氏の逮捕状が発布されたが、警視庁の中村格刑事部長(当時)の判断により土壇場で執行されず、後に書類送検。東京地検は嫌疑不十分で不起訴処分とした。

 伊藤氏は17年5月に検察審査会に不服申し立てを行い、実名・顔出しで会見。事件をつづった著書も出版したが、検審でも不起訴相当となり、民事訴訟で慰謝料など1100万円の損害賠償を求めると、山口氏は名誉を毀損されたなどとして、1億3000万円の損害賠償を求めて反訴した。

 東京地裁は18日、山口氏の反訴を棄却し、伊藤氏への330万円の支払いを命じた。伊藤氏は「民事では素晴らしい結果になった。刑事ではわからなかったことが公になった」と安堵の表情を浮かべたが、納得いかないのは山口氏だ。

 事件が明るみに出てから山口氏はメディアの取材に応じず、「月刊Hanada」への手記寄稿とネット番組で反論したのみ。訴訟に集中すべきとの弁護士の指導を守ってきたというが、今回の“全面敗訴”を受け「2年間沈黙している間に国内外で伊藤さんの主張だけが載せられた。判決に何かしらの影響を与えたのではないか」として、ようやく会見を開いた。

 裁判では性行為に合意があったのか否かが争われた。裁判所は、山口氏の言動が変遷しており、信用性に疑念があるとして、同意はなかったとする伊藤氏の主張を採用。この判決に山口氏は「客観的証拠に基づいて伊藤さんの主張の矛盾点を複数指摘したが、検証されることなく無視された。伊藤さんは性犯罪被害者ではない」と改めて性行為には合意があったと主張した。

 中でも強く訴えたのが会食時の酒量の食い違いだ。酒に強いという伊藤氏はビール2杯、ワイン1~2杯、日本酒2合の酒量だけで意識を失ったのはデートレイプドラッグを用いられた可能性があると訴えた。山口氏側は、ビールのほかに焼酎の水割り、ワイン(2人で一升瓶を注文)、日本酒は最低でも6~7合を飲酒していたと主張。裁判所は「相当量のアルコールを摂取」と、酒量やドラッグはグレー判定となった。

 法廷外では逮捕状の執行が停止となった背景に安倍晋三首相と近いTBSのエース記者だった山口氏が便宜を求めたか、警視庁や官邸、司法当局による配慮があったのではないかと注目された。

 山口氏は「政治記者として恥ずかしいが、中村氏と会ったこともない。そもそも逮捕状が出ていたことすらも知らないのにもみ消しを頼むことができるのか」と否定。2年前、山口氏が警察官僚出身の内閣情報官・北村滋氏(現国家安全保障局長)にメール送信した疑惑も持たれたが「北村さんは面識はあるが、この件で一切のメールもあらゆる相談もしていない」と強調した。

 さらに山口氏は「伊藤さんは容疑者」と衝撃発言し、会見場をざわつかせた。

「虚偽告訴と名誉毀損で今年、刑事告訴し、受理された。逮捕状が執行されて容疑者となるが、捜査に着手したところで容疑者(となるところもある)。伊藤さんは容疑者と書いていただきたい」

 今後は、性暴力を受けた際に膝を脱臼したという伊藤氏が大股で歩いているホテルの防犯カメラ映像の公開や、定期的に記者会見を開き、身の潔白を訴えていくという。

 一方、伊藤氏は判決が出た夜に開かれた支援者集会で、今年7月の裁判での本人尋問を前に、衝動的に自殺を図ったが、未遂に終わったことを告白した。

 山口氏の控訴は想定済みで、控訴審では新証拠となるホテルのドアマンの証言を提出する意向だ。最高裁までもつれるのは確実で、泥沼に陥った双方のバトルはまだまだ続く。