長男殺害の元農水省事務次官に懲役6年 執行猶予なしにネットでは賛否両論

2019年12月17日 16時00分

 執行猶予がつくとの予想もあったが、判決は甘くはなかった。

 長男(44)を刺殺したとして殺人の罪に問われていた元農水省事務次官の熊沢英昭被告(76)の裁判員裁判で、東京地裁(中山大行裁判長)が懲役6年の判決を下し、賛否が分かれている。

 殺害された長男・英一郎さんは、引きこもりがちでゲームばかりしていただけでなく、熊沢被告ら両親に対して、家庭内暴力を振るうこともあった。この事情がどこまで情状酌量で認められるかが焦点になっていた。

 中山裁判長は判決理由で「強い殺意に基づき、一方的に攻撃した悪質な犯行だ」と断罪。熊沢被告は「長男に『殺すぞ』と言われ、反射的に包丁を取り、もみ合いの中で何度も刺した」と“衝動的”だったと公判で証言したが、この発言の信用性を裁判長は否定した。

 さらに、長男の主治医や警察への相談という現実的な対処方法をとらず殺害したことに「短絡的な面がある」とした。

 法曹関係者は「求刑の8掛けという相場通りの判決になりました。裁判所は被告が長男と良い関係を築くために努力してきたことを評価し『(量刑が)重い部類に属するとは言えないが、執行猶予を付ける事案ではない』としています」と話した。事情をくんだ上で懲役6年になったわけだ。

 介護殺人では殺人罪でも執行猶予がつくケースがあり、熊沢被告の公判でも同様の予想もあった。熊沢被告の弁護側も執行猶予を求めていた。

 判決にネットでは「悲惨な事件。執行猶予にしてほしかった」「実刑じゃないと引きこもりは殺していいという誤ったメッセージを社会に与えてしまう」などと賛否両論となっている。

 熊沢被告は公判の最後に「罪を償い、息子があの世で穏やかに過ごせるように祈りをささげることが私の務めだ」と話した。

 中高年の引きこもり問題には支援体制がもっと必要だろう。