目黒虐待死“量刑バトル”の行方を横粂勝仁氏がジャッジ

2019年10月09日 08時15分

 昨年3月、東京・目黒区の自宅アパートで船戸結愛(ゆあ)ちゃん(5=当時)を虐待し死なせたとして保護責任者遺棄致死などの罪に問われた父親の雄大被告(34)の論告求刑公判が7日、東京地裁(守下実裁判長)で開かれた。検察側は懲役18年を求刑し、弁護側は懲役9年が相当と主張して結審。互いに裁判員裁判を意識し、検察側が感情に訴えれば、弁護側はデータを駆使。裁判員たちはいかなる判決を下すのか? 元衆院議員で弁護士の横粂勝仁氏(38)がジャッジした。

 雄大被告は黒のスーツに紺のネクタイ姿。公判中は逮捕当時のチャラい感じと違い、かなり疲れて老けた印象になっていた。この日はずっとうつむき加減で裁判の成り行きを見守っていた。

 まずは検察側が裁判員たちに向かって、資料を使って犯行内容が悪質だったことを説明。雄大被告の食事制限により、2018年1月に上京してから亡くなるまでの期間で結愛ちゃんの体重が激減したことを訴えた。

「1月4日に16・6キロだったのが2月27日には13キロを切っている。被告はこの27日に『12キロ台はやばい』と発言しており、生命の危険を認識していた」と、雄大被告の「3月まで(命の危険があるか)分からなかった」という証言を否定した。

 さらに、「この上なく悪質」「酌量の余地はない」と喝破。結愛ちゃんの体には170か所以上の傷があったが、「反省の弁を述べているものの、なぜこんな傷ができたか述べていない。本件に真剣に向き合っているとはいえない」と指摘した。

 最後に「重い刑を科すほかない。懲役18年を求刑します」と訴えた。裁判員の感情に訴えるやり方で理解を求めたわけだ。

 対する弁護側はパワーポイントを使用し、データを駆使して裁判員たちに呼びかけた。同じような事件の量刑をグラフ化したものを提示し、保護責任者遺棄致死罪の量刑の相場を説明した。

「極端に重くするのは適正ではない事件です。12~13年はちゅうちょする。懲役9年にするのが相当」とした上で、「雄大さんのしたことは正当化されない。『死ねばいい』という批判も受け止める。しかし、刑事裁判では証拠とルールに基づいた判断をしてほしい」と話した。つまり相場からみて18年は長すぎるというのだ。

 この裁判では起訴内容について大きな争いはなく、量刑が争点となっていた。感情論とデータ重視の戦いだが、どちらに重きが置かれるのか? 横粂氏は「裁判員制度は(量刑の)相場を抜きにして市民感覚を入れようというもので、良くも悪くも感情が左右します。相場から外れすぎてもよくないが、相場通りでもよくない。ほどほどなら感情が入っても悪くないでしょう」と話した。

 この日の公判のやり取りで、特に横粂氏が注目しているのが、弁護側から「懲役9年が相当」との主張があった点だ。

「検察側が求刑するのはいつものことですが、弁護側から具体的に年数を言うのは任意です。そこをあえて言ったのは弁護戦略でしょう」と指摘する。

 実は母親の優里被告の裁判員裁判の時も検察側は懲役11年を求刑し、弁護側は懲役5年と主張していた。結局、9月17日に言い渡された判決は間を取った懲役8年だった(優里被告は控訴している)。

 つまり、雄大被告の弁護側も間を取って懲役13年か懲役14年になることを意識して「9年」という数字を出してきた可能性があるというのだ。

 横粂氏は「しかし、母親の時と比べるとより情状酌量の余地はない。求刑の7掛け8掛けが相場といいますが、父親に対してはもっと厳しくなってもおかしくはない。9掛けもあり得ます」と話した。求刑の9掛けなら懲役16年になる。

 公判の最後に雄大被告が裁判長に促され発言した。涙声で「本当に本当に申し訳ございませんでした。本当にごめんなさい」と絞り出すように謝罪。判決は15日に言い渡される。