北朝鮮籍の漁船衝突の背景に過酷な“塩辛ノルマ”

2019年10月09日 07時15分

 水産庁の漁業取締船「おおくに」と北朝鮮籍の漁船が7日、能登半島沖の日本海で衝突した事故の背景に金正恩朝鮮労働党委員長が指示した漁獲量過酷ノルマがあるとみられている。

 同庁はこの日、北朝鮮船籍が日本のEEZ(排他的経済水域)内にある大和堆(やまとたい)周辺で漁業の準備をしていたため、退去させる警告を出したという。しかし、北朝鮮籍船は止まることなく、水産庁の漁業取締船に左側から衝突して沈没。漁船の乗組員60人のうち、数十人は衝突で日本海に放り投げ出されたが、全員無事に救助された。

 海上保安庁によると、同周辺では今年5月下旬から7日までに延べ1016隻に対してEEZ内から出るよう警告を行っていた。

 政府関係者は「北朝鮮船籍は、大和堆周辺で違法操業をしていた。今後もこういう衝突は起こる危険があります。日本のEEZで漁業をできないのだと、外交ルートを通じて北朝鮮側に伝えます」と話す。

 一方、北朝鮮は長期にわたる経済制裁の影響で、深刻な食料事情に追い込まれている。北朝鮮において大型の漁船は、朝鮮人民軍の傘下にある事業所が運用し、漁獲量のノルマが課されている。

 朝鮮半島情勢に詳しい関係者は「正恩氏は今年から水産部門に力を入れています。しかし先月だけで40隻以上の北朝鮮の漁船が、日本海のロシアのEEZ内で密漁を行った疑いでロシア当局に拿捕(だほ)されていました」と話した。

 ロシアの取り締まりが厳しい中で、追い込まれた北朝鮮の漁船は、日本のEEZ内での違法操業に手を出したワケだ。

「北朝鮮の漁業は枯渇しています。水産品といえば塩辛です。正恩氏は塩辛を朝鮮人民軍に納入するため、今年12月までに『漁獲量を前年度よりも絶対に増やせ!』と命令を出していました。しかし、水産庁の監視でノルマは達成できず、失敗に終わるでしょう」と日本の公安関係者は話している。