悪代官と越後屋!関電幹部の“罪と罰”3・2億円受領は法で裁けず?

2019年10月03日 16時00分

 お菓子の下に金貨…まるで時代劇の「越後屋」そのもの――。関西電力の役員ら20人が、福井県高浜町の元助役・森山栄治氏(故人)から多額の金品を受領していた問題で、同社の岩根茂樹社長(66)と八木誠会長(69)は2日、大阪市内で記者会見を開き、調査委員会による報告書を公表した。社内処分についても明かされたが大甘で、進退については、揃って辞任を否定した。専門家は「コンプライアンス的には10点満点で1~2点」と失格の烙印を押したが、果たしてきちんと“成敗”されるのか。

 先月27日に行われた岩根氏による会見が不十分だったため、改めて開かれた会見は、3時間45分に及んだ。報告書に記された金品の受領内容は驚くべきものだった。

 八木氏、岩根氏ら幹部20人が受け取った金品の内訳は、現金や商品券、米ドル、小判、金杯、金、スーツ仕立券など、総額は3億1845万円相当に上る。岩根氏が森山氏から菓子折りが入った袋を受け取った後、中を確認すると、袋の底には金貨10枚ということもあった。

 八木氏は859万円相当、岩根氏は150万円相当の金品を受け取っていたが、豊松秀己元副社長と鈴木聡常務執行役員は1億円超。にもかかわらず処分内容は、八木氏と豊松氏が月額報酬の2割を2か月返上で、岩根氏は2割を1か月の返上。鈴木氏に至っては厳重注意にとどまった。

 岩根氏は自身の進退について「信頼回復のため少しでもお役に立ちたい」、八木氏も「厳粛に受け止め、すべてのウミを出し切りたい。再発防止が今の私の務め」とともに辞任を否定し、今後立ち上げる外部識者による第三者委員会の判断に委ねたいと繰り返した。

 一方で報告書では、森山氏の“異常”ともいえる人物像についても言及している。森山氏は些細なことで怒り、長時間にわたり叱責・激高する面があり、恫喝も記されていた。そんな森山氏を刺激することで現地での発電所運営に支障を及ぼすリスクを考慮し、幹部らも金品の返却が困難であったとしている。だが、金品を受領したのは紛れもない事実だ。

 金品について「費消はしていない」とはいうものの、市民感覚からすると、たびたび電気料金を引き上げるのに、自分たちは金品を受領しているというのは腹立たしい限り。

 そこで、立憲民主党など野党各党は3日に国会内で「関電疑惑野党合同ヒアリング」を開く。立民議員は「受け取ったお菓子の下に金貨があったとは、時代劇に出てくる越後屋と悪代官そのものです。関電役員の体質は、いつからそうなったのか。国会に関電役員を招致して真相を究明する」と激怒した。

 しかし、金品受領問題は、刑法や会社法に抵触する事案ではなく、社内コンプライアンス上での問題だと受け止められている。

 企業不祥事・コンプライアンスに詳しい弁護士法人創知法律事務所の岡筋泰之弁護士は「電気料金は市場原理も働かず、不買運動もしようがない。刑事上の話でも、基本的に収賄は公務員の話。会社役員の収賄罪は会社法967条にありますが、適用例はほぼない。立件はないでしょう」と指摘する。

 一方で、コンプライアンス面について「部下の不祥事ではなく、トップとして(金品を)受領している。社内調査も受けて、不適切とされているのに公表していなかった。しかも、相手は亡くなられていて真相解明も難しい。会社には株主など関係者がたくさんいる。ここまでの状況になった中で『辞任はしません』と言ったことに驚きました。コンプライアンス的に見ても、10点満点で1~2点ですかね」と失格の烙印を押した。

 岡筋弁護士はその背景として「今はSNSで情報が伝播するので、企業イメージを守るのは責任のある立場の人にとって大切な仕事。その対応を間違えると大きなリスクになる。そのあたりが昔よりもシビアになっているのに、年代的に意識をされてない方が多いのかもしれない」とみる。

 今後の第三者委員会については「より厳しい目でしっかり調査してほしい。弁護士の矜持にもかかわる。忖度すると関電にもよくない」と期待したが、金品を受け取った上層部を“成敗”しない限り、関電の信頼回復への道のりは険しいと言わざるを得ない。