ITジャーナリストが指摘する「シェアレンティング」の危険な側面

2019年09月12日 08時00分

親世代のSNSの注意点を解説した高橋氏

「シェアレンティング」って知ってる? 共有するという意味の英語「シェア」と育児の「ペアレンティング」を合わせた造語で、親が自分の子供の情報や写真をオンラインでシェアするという意味がある。子育てをする親世代はSNSで子供の写真をネットに公開することが多い。その際に子供の顔など個人情報を世界中にさらして、犯罪に巻き込まれる危険性が高まる。それだけではない。子供からの訴訟リスクも発生するというから驚きだ。

 いまやブログやSNSなど、個人がネットで情報発信するメディアは数多くある。検索すれば写真付きで「子育て日記」を投稿しているSNSをいくつも見つけることができる。なかには子供の顔がモザイクなしで載っている場合もある。

 親自身や子供の名前などの個人情報が分かるものもある。公開設定にすることで世界中の誰でもアクセス可能で、子供を危険にさらしている。例えば、ロリコンに目を付けられる可能性もあり、写真の背景から住んでいる場所を特定されることも考えられ、それ以前に自分の子供の写真を保存されていると考えるだけでも気持ち悪い。悪意を持つ人間に利用されかねない時代だけに注意が必要だが、昨今は別の問題も浮上している。

 タレントの渡辺満里奈が6月にこんなツイートをしている。

「今日は娘の9歳の誕生日『生まれたての時の写真をSNSに載せてもいい?』と聞いたら『載せてほしくない。自分が大人になって自分(の意思)で載せるならいいけど』(意訳)と娘っこ。うん。娘はSNSを一度も見たことがないけど、その意思表示とても大切」

 子供の写真をネットに載せようとしたら、子供に断られたというのだ。

 多くの親が子供に同意を取らずに、その写真をネットに公開している。SNSを検索すると「おねしょした」という情報や、トイレトレーニングの様子、裸や半裸の写真の投稿もある。これらプライバシー要素の強い情報は子供にとっては“黒歴史”となり得るのだ。

 セキュリティーソフトウエア会社「アバスト」が親世代向けの勉強会を開催し、ITジャーナリストの高橋暁子氏がSNSの注意点について講演した。
 高橋氏は「SNSに子供の写真を公開するメリットはあります。愚痴を聞いてもらい励まされることで、育児で孤独に陥らないことは大きい。しかし、写真は一生残る可能性があり、プライベート情報が筒抜けになることもある」と指摘した。

 親子間トラブルの実例もある。オーストリアでは、オムツ交換やトイレトレーニングの写真をフェイスブックに投稿されたとして、成長した少女(18)が両親を訴える事例も起きた。何度頼んでも親が削除しなかったという。フランスでは子供の同意なくプライベートな写真をネット上に公開すると、1年の懲役や4万5000ユーロ(約522万円)の罰金が科せられる法律ができた。ドイツの警察は子供の写真をネット上に公開することには慎重になるよう警告を出している。

 高橋氏は「日本ではまだ訴訟はありませんが、小学校高学年にもなるとSNSがどういうものかわかる。子供から『なんで私の写真を公開したの?』『“いいね”が欲しいから私を利用したの?』と怒られたという話をよく聞きます」と話す。

 子供の情報を載せる場合は「名前と顔をひもづけしないことが大事」(高橋氏)。ネット上から名前と顔が分かると、ロリコンが親の友人のふりをして「〇〇ちゃん」と声をかけるリスクが増大するからだ。SNSの公開範囲を意識し、子供が将来どう思うかを考えながら投稿せねばならない。