昨秋にも「似た女いる」の情報提供

2012年06月07日 12時00分

 地下鉄サリン事件で特別手配(殺人、同未遂容疑)されてから17年、元オウム真理教信者・菊地直子容疑者(40)が逮捕された。逃亡生活に終止符を打った同容疑者は手配写真はもとより、2月に新た作成されたばかりの似顔絵ともまるで別人だった。電撃逮捕のきっかけは「似た女がいる」という、3日朝の警視庁への匿名通報。だが半年以上も前、潜伏先(神奈川県相模原市内)の近くに住む女性が神奈川県警に同様の情報提供をしていたのだ。

 サリンの製造に関わったとされ、殺人と殺人未遂容疑で逮捕された菊地容疑者が潜伏していたのは、相模原市内の山に囲まれた住宅地だった。さびたトタン張りの古ぼけた一軒家で、以前は道具小屋として使われていたともいう。この家の近くに住む50代の女性会社員が「昨年秋ごろ、神奈川県警に『似ている人物がいる』と情報提供した」と話していることが4日分かった。
 今回、警視庁は通報から半日ほどで菊地容疑者を逮捕している。なぜ、神奈川県警にはできなかったのか?

通報した女性の親族によると、昨年9~10月ごろに相模原南署に電話で「菊地容疑者と似ている人物が近くに住んでいる」と伝えたという。だが、同署からその後、問い合わせは一切なかった。とりあえず捜査員は送ったものの、菊地容疑者とは確認できなかったのだろうか。

 確かに、現在の菊地容疑者は、あごのラインがシャープになっており、17年前のふっくらとした顔つきからは想像もつかない。おまけにメガネをかけ、ヘアスタイルもショートカットで、手配写真とは別人だ。逮捕した捜査関係者が「あれでは道ですれ違っても分からない。それほど、変わってしまっていた」と話したのもうなずける。

だからといって神奈川県警には「しようがない」では済まされない事情がある。オウム真理教の犯罪が明らかとなった坂本堤弁護士一家殺害事件は横浜市内で、ジャーナリストの江川紹子氏(53)が殺傷力が高いとされる「ホスゲンガス」で襲撃された事件も同県警管内で発生しており、オウム事件とは深い因縁があるからだ。


 神奈川県警の元刑事で「現場刑事の掟」の著者・小川泰平氏(50)は「オウム対策本部」に籍を置き、捜査に当たっていた十数年前を振り返る。
「県警の昇任試験では、菊地直子や平田信の身長や特徴を尋ねる問題が出たほど捜査に力を入れていた。特別手配が出た時にはローラー作戦で警視庁、神奈川県警は全部の家を回ったハズです」

 菊地容疑者は逃走直後に千葉・市川、名古屋、埼玉・所沢など転々としていたことが分かっており、神奈川にたどりついた時期は正確には分かっていない。捜査関係者によると、同居していた高橋寛人容疑者(41)は「東京・町田市内で約4年、相模原市で約2年暮らしていた」と話しているが、それにしても、重要警戒エリアにしていた神奈川県警管轄に飛び込んで潜んでいたとは、県警幹部も忸怩(じくじ)たる思いを抱いているに違いない。