凶悪逃走犯4か月未収監の謎 実刑確定後なぜ“シャバ”に 当局の対応に問題は

2019年06月20日 16時00分

 窃盗、傷害、覚醒剤の“トリプル犯罪者”に逃げられた! 19日午後1時半ごろ、窃盗罪などで実刑が確定した小林誠元被告(受刑予定者=43)を収監しようと、神奈川県愛川町のアパートの一室を横浜地検職員と神奈川県警厚木署員が訪れたところ、目の前で、乗用車で逃げられた。しかも刃物を所持しているとみられるから、日本中に不安が広がっている。神奈川県警が必死に行方を追っているが、実刑判決が確定している“凶悪犯”が、なぜ自宅でのうのうと暮らせていたのか――。

 県警によると、小林元被告の車は相模原市内を通り、横浜町田インターチェンジから東名高速に入ったとみられる。午後6時すぎに大和トンネル付近で確認された後、車は20日朝までに厚木で見つかったが、小林元被告は逃走を続けている。地検が愛川町に連絡したのは約3時間後だった。

 地検などによると、小林元被告は窃盗や傷害、覚醒剤取締法違反などの罪に問われ、昨年9月に一審の横浜地裁小田原支部で懲役3年8月の実刑判決を受け東京高裁に控訴。高裁は控訴を棄却し、今年2月に判決が確定した。控訴審中に保釈されたという。

 これまで書面で出頭を要請していたが応じず、自宅を複数回訪れたものの接触できなかった。19日は地検職員と厚木署員が自宅に行ったところ、自宅内で刃物を振り回し、近くにあった車で逃走した。車は黒のホンダ・フィット。

 地検からの連絡を受けた愛川町は防災行政無線で町民に注意喚起した。竹内寛志次席検事は「このような事案が発生し、お知らせが遅くなってしまったことは大変申し訳なく思っている」と謝罪した。

 それにしても、不可解なのは、なぜ、有罪判決が確定したのに収監されず、のうのうと4か月も“シャバ”にいたのか。

「通常、判決確定後にただちに刑務所に入ることになります。ただ、そのスケジュールが遅れることは珍しいケースですが、たまにあります。例えば、入院中などのしょうがない理由があれば、遅らせてもらえるとは聞いたことがあります」(法曹関係者)

 実は近年、保釈が増えている。

 法曹ジャーナリストは「拘置所が足りないため、という理由が一つ。そして、弁護士と被告が拘置所の面会所のアクリル板越しでは、公判の打ち合わせが不十分となるため、証拠隠滅と逃亡の恐れがない限り、保釈してじっくり打ち合わせしてもらった方が公判もスムーズになるからとの理由もある。その流れで、保釈請求が許可されるケースは10年前の倍になっている」と明かす。

 小林元被告の保釈についても、正当な手続きによってなされた。前出の法曹関係者が続ける。

「保釈請求した弁護士にも、それを許可した裁判所にも責任はないですね。手続き的には正当な手順を踏んでいるから、保釈されたわけです。身柄解放は刑事裁判の原則だから保釈請求しただけですよ。ただ、こういった事態になってしまったということは、今後、全国の裁判所で保釈請求に許可が出にくくなる可能性はありますね」

 とはいえ、小林元被告は窃盗、傷害という“凶悪犯”で、覚醒剤は常習性がある危険な男だ。

 元暴力団関係者は「罪からすると、小林被告ってのは、シャブ代欲しさに窃盗を繰り返していた犯罪者の可能性もある。私の知り合いのシャブ中(毒者)は、家に警察が踏み込んできたとき、『刑務所に入ったら、シャブが食えなくなる!』とパニックになって、警察を振り切って逃げようとした。あっさり捕まりましたが。それぐらい、シャブは強烈に脳を支配するんです。もし、そんなキマっている状態で刃物を持って逃げたとしたら、見境ない行動を取りますよ」と指摘する。

 恐怖にさらされるのは一般市民だ。

 前出の元暴力団関係者は「収監まで期間があって、(出頭に応じず)冷静に引き延ばし工作をできたぐらいの男だったら、綿密な逃走計画を練っていた可能性もありますよ。ホームレスなどの他人の住民票を使って、新住所を作って成り済ます。住民票や身分証明書を偽造するのは簡単だから、他人として生活する準備もできます」と語る。

 何とかならないものか――。