墓石「不法投棄」の深刻な背景

2019年06月13日 07時15分

 墓石を不法投棄したとして福岡・北九州市の土木工事会社社長が逮捕された。団塊の世代の大量退職で、墓探しの困難さや墓は要らない論、墓守不在問題など、墓をめぐる考え方も大きく変化している。「墓じまい」をするケースも多く、それに伴う墓石の不法投棄は2010年前後から全国で問題視されている。投棄問題に詳しい専門家は、墓を新たに作らない、墓が売れない時代が到来し「今後も増える可能性がある」と指摘している。

 福岡県警は11日、宅地を駐車場にする工事の際に墓石を不法投棄したとして、廃棄物処理法違反(不法投棄)の疑いで、北九州市の土木工事会社社長、貝掛真人容疑者(70)を逮捕した。

 2015年7月、同市八幡東区の宅地の地中に墓石53個(約5・3トン)を捨てた疑い。この墓石は同市内の霊園が「墓じまい」などをして出たもの。霊園の解体工事を貝掛容疑者の会社が請け負った。墓石で土地のかさ上げをしたとみられる。

 昨年11月、別の業者が駐車場から宅地に造成する工事をした際に、地中から墓石を見つけた。貝掛容疑者は「処分費用を浮かせたかった」と容疑を認めている。

 同様の業者による墓石の不法投棄は2010年前後から全国で目立っている。実態に詳しい一般社団法人「遺品整理士認定協会」副理事長の小根英人氏は「今後も起きかねない」と指摘する。

 不要になった墓石は産業廃棄物だが、最終処分場にそのまま持ち込むことはできない。細かく粉砕して破棄する必要があり、その設備・能力を持つ墓石の加工・販売業者が取り扱うのが通常だという。貝掛容疑者の土木会社は、その工程を省いて地中に埋めることで処分費用を浮かせたわけだ。

 墓石の再利用のケースは「あるにはあるが、ニーズが少ない」(小根氏)のが実情。ほとんどは粉砕され、廃棄されていく。その件数は近年、急増しているという。背景にあるのは「墓石が売れない」ことだ。

 現在、墓石を扱う小さな販売・加工会社はどんどん潰れている。

「昔のように月に何十、何百と墓石が売れる時代ではない。お盆のお墓参りや、毎年高くなるお寺へのお布施など、先祖の墓を受け継いだ団塊世代は苦労してきた。そんな“不条理”を自分の子供に背負わせない選択をする人が増えた」(小根氏)

 新しい墓を作らない。そもそも、新しい墓を作ろうとしても寺に置くスペースがない。最近は墓を買わず、永代供養の納骨堂を選ぶ人が多くなっている。その結果、今ある墓を処分する「墓じまい」の動きが広まっている。今回の事件の発端も「墓じまい」にある。

「墓石に使う大理石は中国で1個20万円で仕入れて、輸送費や加工賃などが上乗せされて、販売価格は250万~300万円くらいになる。しかし、売れなくなったことで、価格がどんどん下落した。葬儀場なども経営している大手を除いて、打撃を受けた小さな店はどんどん潰れていった」(小根氏)

 墓じまいの動きが加速していけば、目をつけた悪徳業者の不法投棄が増える可能性も高くなる。今回の事件は、宅地↓駐車場、駐車場↓宅地に土地用途を変えたことでたまたま発覚した。だが、墓石の不法投棄が今後増えていった場合、自分で建てた家の足元に他人の墓石がひそかに眠るケースが発生しないとも限らない。