バス待ち園児を脅迫した71歳無職男への不安

2019年06月11日 16時10分

死傷事件が起きた直後の現場とカリタス小のスクールバス(先月28日)

 川崎の大量殺傷事件に“便乗”か――。東京・足立区で、送迎バスを待つ幼稚園児の声がうるさいから「静かにさせなければ、何があっても文句を言うな」などと、危害を加えることを連想させる脅迫文を園児の自宅ポストに入れた疑いで、近所に住む男が逮捕された。先月28日に神奈川・川崎市内で「カリタス小児童ら20人殺傷事件」があったばかり。巻き込まれた保護者らに緊張が走った。

 警視庁西新井署は10日までに、脅迫の疑いで足立区の無職、新井豊容疑者(71)を逮捕した。容疑は6月5~6日の間、足立区内に住む幼稚園児宅のポストに「朝、駐車場で子供たちを騒がせるな。静かにさせろ。できなければ何があっても文句を言うな」などと手書きしたA4サイズの紙を入れた疑い。

 新井容疑者が住むアパートから数十メートルの距離に、送迎バスの駐車場(待ち合わせ場所)が設定されていた。母親がバスに乗せた園児を見送った後で、自宅に戻った6日朝に脅迫文を発見した。紙は四つ折りにして、ポストから半分はみ出た状態ですぐに気付かれるようになっていた。

 約1週間前には、川崎市で私立カリタス小の送迎バスを待つ児童らが巻き込まれる連続殺傷事件が起きたばかり。新井容疑者が“便乗”する計算をしたかどうかはともかく、保護者も大きな恐怖を感じ、また警察も「危険性あり。早急に態勢を組んで被疑者を検挙する」べく動き出した。

 脅迫状事件を受けて、園児を持つ父親は「昔はみんな子供だった。少しうるさくても、目をつぶる余裕のある社会になってほしい」と話す。

 とはいえ幼稚園や保育園をめぐる“騒音”は、放置できない社会問題となっているのも事実だ。

 幼児保育業界の専門家は「人が集まる場所に建てられた園で、苦情を受けたことのない施設は半数もない。送迎バスの駐車場も近隣に説明なく設置し、トラブルになることもある。子供の声だけでなく、そこに集まる親同士の会話への苦情も少なくない」と話す。全員が子供たちに優しくできる社会は理想だが、現実は追いついていない。

 新井容疑者は「脅迫文として投函したわけではない」と容疑を否認しているが「バスを待つ子供の騒ぎ声がうるさくて、今年4月ごろから悩んでいた。もしこれで解決されなければ、どうしたらいいかわかりません」と話しているという。

 実際に、4月ごろには脅迫された被害者の住むアパートの管理会社に「駐車場の園児の騒音がうるさい」と匿名の苦情電話が入っている。管理会社から被害者にその情報は伝わっていた。

 同署によると、この駐車場は前から同じ場所にあった。被害を受けた保護者の園児が今年度から幼稚園に通うようになった。つまり、新井容疑者にとっては、新入生園児の声が例年よりも大きく感じたということのようだ。新井容疑者にはガマンできない騒音だったとしても、脅迫文を投げ込むのは違法だ。

 このまま起訴され有罪判決が出たとして、初犯の場合は脅迫罪で懲役刑となることはほぼなく、執行猶予付き判決ですぐ戻ってくる。新井容疑者は、他の数人の園児らの自宅も把握し、同じような文書をポストに入れているだけに、保護者らの心配は逮捕後も尽きることがない。同署は「我々が関係機関と対応していく」としており、バスの駐車場も別の場所に移動する見込みだというが…。