3月中に「4件の性犯罪が無罪」の衝撃 問われるこの国の司法制度

2019年05月17日 07時15分

【“普通”の家 父・母・娘…家族レイプの衝撃:短期連載・最終回】性犯罪事件の無罪判決が3月中に4件続いた背景を考えるシンポジウム(9日、都内)で、当連載で追った事件が紹介された。父親Aのみならず母親Bまでも加担していたことを知った聴衆は一様に「えー…」と拒否反応を示していた。

 被害者支援に取り組む弁護士の上谷さくら氏は、さいたま地裁の量刑(主犯のAに懲役18年、ほう助犯のBに同7年)に「殺人でも18年はあまりない。1人の被害者に対する強姦、強制わいせつとしては相当重い」と判決を評価した。一方、4件の無罪判決はなぜ出たか。裁判所、検察、法律の問題点をこう語る。

「判決文や報道から想像できる範囲で判断すると、検察の能力低下は感じないが、性犯罪被害者の心の傷は大きいので、遠慮した検事が事情を聴き切れておらず、公判でそこを突かれた可能性はある。法律が悪いというのは起訴できるかどうかという間口の問題で、検察が法律の要件を満たしていると判断して起訴した以上、無罪になったのは法律が悪いとはならないと思う。裁判所の事実認定や評価が不相当なのは目についた。背景には裁判官のゆがんだ倫理観の問題があるかもしれない」

 無罪判決と、一般人の「おかしい」という感覚との間には埋められない溝がある。「4件中3件は『被害者が抗拒不能』『性虐待を受け続けていた』『同意していなかった』などの事実認定をしたうえで無罪。つまり、ひどい被害は明らかだけど犯罪ではない。国から『こんなことをしても犯罪にはなりません』とのお墨付きを与えられたに等しい」と上谷氏。

「おかしい」と声を上げる世論に対し、弁護士の間でも「法律に従って判断されただけ。批判する方がおかしい」と反論する見方も少なくない。

「国民の多くが判決に嫌悪感を抱いたのは『何なのこの国?』という怒りや不安だと思う。加害者はきちんと裁かれるべき、被害者は適切に保護されるべき、未然に防ぐシステムを構築すべき――などの議論をすることで、法律や制度ができて安心して暮らせる社会ができていく。おかしいと感じる普通の感覚がなければ『これでいいのだ』で終わってしまう」(同)

 家庭内の性被害を防ぐには幼少期からの性教育も重要だ。英国の学童保育や小学校では「パンツの中は自分だけのもの。誰かが中を見せてと言ったり触ろうとしたりしたらノーと言おう。秘密と言われても断ろう。そういうことがあったら信頼できる大人に相談して」と歌で繰り返し教えているという。有罪でも無罪でも被害者は存在する。その一人ひとりが受けた悲しさを無駄にしてはいけない。(終わり)