北朝鮮ミサイル連発の深謀 「日朝首脳会談を歓迎する」メッセージか

2019年05月10日 16時00分

発射された北朝鮮の“飛翔体”(朝鮮中央通信=ロイター)

 韓国軍合同参謀本部は9日、北朝鮮が同日午後4時29分から49分(日本時間同)にかけ、北西部平安北道・亀城からミサイルとみられる“飛翔体”2発を東方に向けて発射したと明らかにした。飛距離はそれぞれ約420キロ、約270キロだったと推定。国連安全保障理事会決議に違反する短距離弾道ミサイルの可能性がある。韓国軍関係者は2発とも飛行高度が約50キロで、日本海に落下したと説明した。北朝鮮は今月4日にも複数の“飛翔体”を発射している。その意図を専門家が読み解いた。

 北朝鮮の相次ぐ発射は、軍事力強化を重ねて誇示して米韓をけん制し、2月の米朝首脳会談決裂後、膠着状態が続く非核化交渉を優位に進める狙いがあるとみられる。

 日本の防衛省は9日、「日本領域や排他的経済水域(EEZ)への飛来は確認されていない」と説明。安倍晋三首相は「現時点で、わが国の安全保障に影響があるような事態は確認されていない」と官邸で記者団に述べた。

“飛翔体”と呼ばれているが、短距離弾道ミサイルであることは明らか。日本政府は9日、「何のメリットがあるのか」(首相官邸筋)と相次ぐ挑発行為に困惑を強めた。

 朝鮮半島事情に詳しい文筆人の但馬オサム氏は、ミサイル連射の意図をこう読み解く。

「4日の射程(最大)200キロのミサイルは、明らかに文在寅に対するメッセージですね。『米朝会談ではよくも恥をかかせてくれたな』という。今回の射程(同)420キロの短距離ミサイルは、安倍晋三首相に対するメッセージとも言えます。首相が『前提条件なしで日朝首脳会談を行う用意がある』と言ったことへの返礼です。『俺は、決して日本に屈して会談を受けるんではないぞ』『その気なら東京を火の海にできるんだ。そのつもりでこい』という金正恩の精一杯の強がりです」

 朝鮮労働党の金正恩委員長は4月の演説で、米朝の「橋渡し役」を目指しながら、機能していないとして韓国を批判。ちなみに正恩氏の“強がり”は、韓国による日本への言動にも当てはまるという。

「経済破綻寸前の韓国が『日本は歴史問題を政治利用している』などと上から目線の言いがかりをつけてきましたが、それと同じで、朝鮮民族は困っている時ほど居丈高なのです。レーダー照射問題で非を認めず『日本が威嚇的な低空飛行をしたから』と言い募るのもまったく同じことと言えます」と但馬氏。

 つまり、ミサイル発射にも、日本が右往左往する必要はないということ。

「むしろ、今回の短距離ミサイルは、強がりの裏の『日朝首脳会談を歓迎する』というメッセージと受け止めるべきなのです。当然ながら、日朝会談は、安倍首相とトランプ米大統領が示し合わせなければあり得ません。となれば、韓国=文在寅政権はますますカヤの外にいることが明白になるだけです」(同)

 文大統領は9日夜、KBSテレビの番組に出演し、北朝鮮が“飛翔体”の発射を繰り返せば「(非核化に向けた)対話と交渉の局面を困難にする」と警告した。9日の発射が弾道ミサイルであれば、国連安全保障理事会の制裁決議に違反する恐れがあるとの認識も示した。一方、発射された“飛翔体”の飛距離や方角は、日米韓のいずれにも脅威とならないように配慮されていたと指摘。北朝鮮には対話を続ける意思があると強調した。どうにも歯切れが悪い。

 但馬氏は「4日のミサイル発射への対応で、文政権の支持率は若者層を中心に急落中です。文大統領が、飛翔体がミサイルであることを認め、北朝鮮を非難すれば、これまでの親北政策が失敗であったことを自白することになります。その逆にこれ以上の北寄りの態度を見せれば、金正恩にますますコケにされ、当然トランプ大統領の逆鱗にも触れ、これまた支持率は急降下確実。もはや、文政権は死に体です」と指摘している。

 その文大統領は10日で就任から2年。最優先課題の北朝鮮核問題では米朝協議が膠着し、北朝鮮は“飛翔体”発射に踏み切り暗雲が垂れ込める。内政では経済政策への批判が強い。日本との間では元徴用工問題などで悪化した関係改善の見通しが立たず、内憂外患の状況だ。