大津・園児死傷“悲劇の盲点”「見通しの良い直線」道路でなぜ

2019年05月09日 16時00分

事故現場で手を合わせる女性

 またしても幼い命が奪われる悲劇が起きた――。滋賀県大津市の交差点で8日午前10時15分ごろ、車2台による衝突事故が発生。はずみで信号待ちをしていた「レイモンド淡海(おうみ)保育園」の2、3歳の園児13人と保育士3人の集団に車が突っ込んだ。15人が病院に搬送され、伊藤雅宮(がく)ちゃん(2)と原田優衣ちゃん(2)が死亡。時瑾潤(じ・きんじゅん)ちゃん(2)が脳出血などで意識不明のほか、園児10人、引率の女性保育士3人が重軽傷を負う大惨事となった。決して「魔の交差点ではない」という場所で一体何があったのか。

 大津署は自動車運転処罰法違反(過失傷害)の疑いで、2台の車を運転していた2人を現行犯逮捕した。2人にけがはなかったが、現場にブレーキ痕はなかった。

 逮捕されたのは右折しようとした乗用車を運転していた大津市の無職、新立文子容疑者(52)と、直進した軽自動車を運転していた同市の無職女性(62)。女性はこの日の夜、釈放された。過失の度合いが低いと判断されたとみられる。

 新立容疑者の容疑は、交差点で前方確認が不十分なまま乗用車で右折し、対向車線を直進してきた女性の軽乗用車と衝突、衝撃で軽乗用車を歩道に乗り上げさせ、園児らを死傷させた疑い。同署は安全確認が不十分だった疑いがあるとみて、同法違反(過失致死傷)容疑に切り替えて捜査する。

 2人とも買い物から帰る途中で「信号は青だった」と説明。新立容疑者は「前をよく見ていなかった」と供述し、女性は「左にハンドルを切って(右折してきた)車をよけた」との趣旨の話をしている。現場の状況から、間に合わずにぶつかったとみられる。

 現場は瀬田川沿いを南北に走る見通しの良い直線道路と東に伸びる道路の交差点。保育園は、現場から約200メートル離れた場所にあった。園児らは保育士に連れられて散歩をしており、横断歩道を渡るために信号待ちをしていた。

 事故を目撃して119番通報した現場近くのホテルの従業員女性は「子供が10人くらい下敷きになったり、はね飛ばされたりして、大人の女性が悲鳴を上げていた。痛ましい現場でした」と声を震わせた。この女性はホテルのタオルを持ち出し救助に参加。AED(自動体外式除細動器)を持って救助に当たる人など、多くの人が被害者を助ける一方で「助けもせずに動画を撮ってる人もいた。ツイッターに上げたりしたら許さない」と怒りをにじませた。

 また、地元関係者は「川沿いの道は見通しの良い直線。交通量は多く、朝夕は右折する車も多いですが、右折の(信号)表示がすぐに消えるわけでもないから、焦って右折することもない。あそこでの事故は聞いたことがないし、魔の交差点なんてわけじゃない」と指摘した。

 事故を受けて、保育園を運営する社会福祉法人「檸檬会」が会見。若松ひろみ園長は、亡くなった2人について「とても素直で笑顔を絶やさない子たちでした…。いつもと変わらず出て行きました…かわいそうです…」と泣き崩れた。

 事故に遭った「うさぎ組」の園児たちは、午前10時過ぎに園を出発。琵琶湖の湖岸まで散歩し、10時45分ごろには園に戻る予定だったという。会見後には保護者向けの説明会を開催。保護者約50人が参加したが、散歩の禁止などを求める声はなかった。

 もしも事故のときに園児たちが信号待ちをしていなかったら、ニュースにもならない衝突事故だったかもしれない。だが、どんな事故も最悪のタイミングで起きると思わぬ大惨事、悲劇になってしまうことを不幸にも証明してしまった形だ。

 高齢者でもない、どこにでもいるドライバーの“うっかり”がもとの、いつでも起こり得る交通事故が、幼い尊い命を奪ってしまったことを、ハンドルを握る者は心に深く刻み込まなくてはならない。