ゴーン被告と東京地検特捜部の“暗闘”激化

2019年04月25日 08時00分

ゴーン被告(ロイター)

 会社法違反(特別背任)の罪で追起訴された日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告(65)に対し、東京地検特捜部がなりふり構わぬ作戦に出ている。同被告の妻キャロルさん(52)が事件関係者と接触していたという情報を水面下でマスコミにリーク。それをフックに東京地裁に保釈反対の意見書を提出した。捜査を指揮するのは、検察担当記者から「男・山根」ならぬ「男・森本」と言われる森本宏特捜部長。邪魔するものはすべてなぎ倒す勢いで、ゴーン被告の弁護団にも目を光らせているという。

「今回の森本さんは怖いですよ。完全にリミッターが外れています」

 そう語るのは検察関係者だ。一昨年9月に特捜部長に就任した森本氏。特捜部には通算7年半在籍し、副部長時代には猪瀬直樹元都知事が選挙資金として借りた現金5000万円を収支報告書に記載していなかった“徳洲会事件”を手掛けた。

 就任会見で森本氏は「国民が不公正、不公平と思うような事件、氷山に例えると水面下に隠れていて見えない事件をきちんと見つけ出し、刑事責任を問うていきたい」と宣言。その集大成が今回の“ゴーン事件”だ。

 計4度の逮捕。追起訴された特別背任では、保釈中の再逮捕という“禁じ手”も繰り出した。

 長期勾留を「人質司法」と海外から批判されようが、お構いなし。バランスを取ったのは裁判所で、特捜部が請求したゴーン被告の10日間の勾留延長を拒否し、8日間に短縮した。

 追起訴を受け、ゴーン被告の弁護団は22日に再保釈を請求。代理人の弘中惇一郎弁護士(73)によると、パソコンの使用制限や事件関係者との接触禁止など、3月の保釈時と同じ条件を提示したという。

 すると、23日に一部メディアがキャロル夫人が被告に代わって事件関係者と接触していたと報じた。ゴーン被告自身は保釈の条件で事件関係者との接触が禁止されているが、キャロルさんは対象外。だが、特捜部の見立てでは夫人や家族も事件に関わっているとして、証拠隠滅の恐れがあると主張している。
「メディアに情報をリークしたのは、もちろん検察側。これを材料に特捜部は地裁に保釈反対の申請書を提出した」(同)

 被告弁護団の高野隆氏はブログで「ゴーン氏はもちろんキャロルさんも、裁判所が接触を禁じた人々に接触したことなどただの一度もありません」と完全否定しているが…。「特捜部内では弁護団もグルで、キャロルさんと事件関係者の接触を黙認したと勘繰る声も上がっています。なかには『弘中(弁護士)を(聴取に)呼ぶべきだ』という強硬意見も…。普通に考えたらありえませんが、今の森本体制だと万が一があるので、気が抜けません」(テレビ関係者)

 検察担当記者の間では、我が道を突き進む日本ボクシング連盟の山根明前会長(79)とダブらせ、「男・山根」ならぬ「男・森本」と呼ぶ者もいるという。

「この事件で失敗したら、特捜部は解体。森本氏は何が何でも結果を出さねばならず、邪魔なものはすべてなぎ倒す勢いです。ゴーン被告の再逮捕計画をスッパ抜いた一般紙にブチ切れ、即刻取材禁止を通達したのは有名な話です」(同)

 弁護団は証拠隠滅を疑う検察に対し、近く反論文を公表する見込み。法曹関係者は「あっさり再保釈かと思いきや、もんでいますね。地裁としては、再逮捕状を認めた手前、すんなり保釈を許可するのは体裁的にどうなのかと考えているのかもしれません」と話す。

 日産をめぐっては、フランスのルノーが今月、経営統合を求めていたことが明らかになった。統合に反発してきた西川広人社長ら日産側に友好的な姿勢を示していたルノーが態度を一変させた形で、両社の提携関係が今後不穏になる恐れがある。

 事態は風雲急を告げている――。