スリランカ爆弾テロ “IS出戻り組”関与か

2019年04月24日 07時30分

犠牲となった人たちに黙とうをささげる人々(ロイター)

 インド洋の島国スリランカ最大都市コロンボの教会や高級ホテルなどで起きた爆弾テロで、犠牲になった日本人女性は現地在住の30代・高橋香さんであることが22日、分かった。一連のテロによる死者は290人以上。首謀者は謎の国内イスラム過激派「NTJ」とみられるが、ローカル組織がここまでの大規模テロを起こせるのか。専門家は、中東の拠点を失ったイスラム過激派イスラム国(IS)からの“出戻り組”の関与の可能性を指摘。同じく島国の日本は安全なのか――。

 30年近くにわたって続いた反政府武装組織「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」と政府軍の内戦が2009年5月に終結し、治安も改善されたスリランカで起こった未曽有の爆弾テロ。21日、最大都市コロンボとその周辺の教会や高級ホテルなどで爆弾が相次いで爆発し、死者290人、負傷者500人以上の大惨事に。河野太郎外相は22日、日本人1人が死亡、4人が負傷したと明らかにした。

 亡くなった高橋さんはホテルで家族と食事中に巻き込まれた。フェイスブックによると、高橋さんは15年に娘を連れスリランカに渡り、先に現地入りした日本人の夫と暮らし始めた。「家族みんなが毎日楽しく、健康に過ごせますように」と記すなど、充実した生活を送っている様子だった。

 地元警察は事件に関連して、これまで30人余りを逮捕。政府報道官は国内のイスラム過激派「ナショナル・タウヒード・ジャマア(NTJ)」が関与したテロとの疑いを深め、調べていることを明かした。NTJとは一体どのような組織なのか?

 中東情勢に詳しい軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は「言ってみれば、地元のローカル組織。主なテロ実績はなく、名前が出たのは2年前に仏教の過激派組織と対峙した時くらいです。似たような名前の組織も数多くあり、実体はまだ解明できていません」と話す。

 そんな小規模組織がここまでのテロを計画できるものなのか。黒井氏は「おそらく背後にいるのはIS(イスラム国)」とした上で、次のように語る。

「ISの本拠地シリアでは壊滅状態ですが、彼らは死んではいない。1年ほど前からIS構成員はシリアから逃げ出し、他国に散らばっています。今回のテロはISに参加していたスリランカのタミル人の“出戻り組”が、NTJと結びついて起こした可能性が高いように思います」

 ISは17年にイラクとシリアの拠点を失い、今年2月にはトランプ米大統領が支配地域の「完全制圧」を宣言。勢力弱体化は進んでいるが、かえってそれが欧州などから組織に参加していた構成員の“里帰り”を促しているという。「テロは2~3人やる気のあるヤツがいれば、できちゃいますから」(黒井氏)

“グローバル・ジハード(世界規模の聖戦)”の流れは今後も続くとみられる。日本でも起きる可能性はあるのか?

「ISに参加した日本人はいないはずなので、他国に比べて日本でイスラム過激派によるテロが起きる確率は低いと思います。島国ですしね」(黒井氏)

 ただ、世界的にみればスリランカでの大規模テロに触発された他国のIS構成員が、一気に動きだす可能性はあるという。

「IS構成員の多いアラブ諸国を筆頭に、アジア圏ではインドネシアやフィリピン、中国ならば西部の新疆ウイグル自治区、ロシアならチェチェン(共和国)あたりは危ないでしょうね」(同)

 10連休で海外に行く人たちは用心が必要だ。