東京・池袋で87歳暴走 高齢者運転事故に専門家「連帯責任制」「低速カート」提言

2019年04月20日 16時00分

 暴走老人の運転にはもう我慢ならない。東京・池袋で19日午後、男性(87)が運転する乗用車が次々と人をはね、ゴミ収集車に衝突した事故の波紋が広がっている。自転車に乗って横断歩道を渡っていた松永真菜さん(31)と長女莉子ちゃん(3)が死亡し、8人が重軽傷を負った。連続する高齢者ドライバーの事故には、当然ながら「免許返納」の声が高まっている。一方、専門家は2つの対策を提言した。

 19日午後0時20分ごろに起きた事故は、東京メトロ東池袋駅出入り口からすぐの「日出町第二公園」のそばの道路約150メートルの間で起きた。

 男性が妻を助手席に乗せ、運転していたトヨタの「プリウス」のドライブレコーダーに記録された音声には夫婦の会話が残っていた。「危ないよ。どうしたの?」という妻の言葉に男性は「ああ、どうしたんだろう」と戸惑う様子。この直後にガードパイプに接触し、さらに加速し、約70メートル先の横断歩道で自転車に乗った男性をはねた。

 さらに加速した車は約80メートル先の交差点に突入。長女の莉子ちゃんを後ろに乗せた電動自転車の松永真菜さんをはねた。左から進入してきたゴミ収集車の右後部に衝突し横転させ、衝撃で回転した車体は歩行者4人をなぎ倒し、対向車線のトラックにぶつかって“死の行進”は終わった。

 交差点付近で働く男性は「お昼にしようと思っていたら、ガシャンとぶつかる大きな音がした」。目を覆いたくなる惨状があった。フロントが大破したプリウスの運転席でうなだれた男性、横転したゴミ収集車、前輪だけの電動自転車、男性がうつぶせに倒れていた。

「小さな毛布がかけられていて、子供だとわかった。近くにはヘルメットも転がっていた。スマホを取り出したが、思い直してポケットにしまった。さすがに撮影する気にはならなかった。私より先に見た同僚女性は気分が悪くなって昼食を食べられなかった」(同)

 現場は交通量こそ多いが、見通しは良い。交通規制がとけた午後5時半、交差点にはまだ鮮やかな赤い血がべっとり残っていた。解除されたばかりの横断歩道を歩くと、自動車の部品の感触が伝わる。まだ何かの部品のネジが転がっていた。

 警視庁は車を運転していた男性を自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)容疑で捜査。事故を起こしたことを認めているほか、車両やドライブレコーダーを押収したことから証拠隠滅の恐れがないことから、逮捕せず捜査を進める方針。飲酒や薬の服用、持病は確認されていないというが、調べに「アクセルが戻らなくなった」と話しているという。またも起きた高齢者の事故。ツイッター上にはさまざまな意見が上がった。

 交通ジャーナリストの今井亮一氏は「アクセルが戻らないのなら、足元に空き缶でも落ちて想定外の事態が起きたのか。そうでなく、車の不備ならトヨタは大変なことになる」と話す。一方で「運転手の話はうのみにできない」と踏み間違いを疑っている。

 ブレーキとアクセルの踏み間違い交通事故年齢別件数(警察庁発表)を見ると、2015年に事故は全年齢で5830件。うち死亡事故は58件。ただ、うち50件は65歳以上が起こしている。

 免許返納の声は待ったなしだが、現実的には難しい。「若者の車離れ」が起きる今、高齢者のお得意様に離れられたら困る自動車メーカー、官僚は動かない。そこで、取るべきアプローチを2つ、今井氏は提案する。

「飲酒運転や無免許運転は運転をすすめた周辺者も処罰される。高齢者が事故を起こしたときに、その家族も周辺者として責任を負わせれば、家族は運転を止めるだろう」(今井氏)。高齢者の起こした事故の責任を配偶者や子供も負う法整備を進めるべきという。

 もう1つは、新しい市場を作るというもの。

「100キロ以上出る1・5トンの乗用車は高齢者には必要ない。高齢者にはゴルフ場にあるような、30キロ制限の屋根付きカートを許可すればいい。アクセルとブレーキが足元にあるから間違いが起こるなら、アクセルは手で、ブレーキは足で操作させる。世界が高齢化に向かっている。新しい市場を開拓できる」

 本気で高齢者の運転を考えねばならない。