MDMA教授に“巻き込まれた”卒業生の運命

2019年04月18日 07時15分

 四国厚生支局麻薬取締部は16日、免許がないのに大学の研究室で学生に合成麻薬「MDMA」(通称・エクスタシー)などを製造させた疑いで松山大学薬学部の岩村樹憲教授(61)、助教、事件当時の学生らを麻薬取締法違反(製造・所持)の疑いで松山地検に書類送検した。教授は「学術目的だった」と供述しているという。気づかないうちに犯罪の片棒を担がされていた学生らの心中はいかばかりか。同じ学問を志す学生らに衝撃を与える事件となった。

 同取締部によると、松山地検に書類送検されたのは、薬学部医療薬学科医薬品化学研究室で、危険ドラッグなどの薬物を研究する岩村教授とサポート役の助教、当時学生だった卒業生4人。学術研究に限定して麻薬製造を行える麻薬研究者の免許がないのに、大学の研究室で、2013年4~7月、学生2人に「MDMA(メチレンジオキシメタンフェタミン)」と「MDA(メチレンジオキシアンフェタミン)」を製造させた疑い。18年1~2月には、別の学生2人に「5F―QUPIC(ゴエフキューピック)」(約0・3グラム)を製造させた疑い。合成したMDMAは見つかっていないが、大学の研究室から微量の、別の種類の麻薬が見つかった。

 岩村教授は「学術目的で学生に合成麻薬を製造させた」と容疑を認めている。内部告発ではなく、麻薬取締部は外部関係機関からの情報提供で捜査に着手した。

 問題は都道府県知事から交付される麻薬研究者の免許を持っていなかったことだ。数年ごとに更新が必要なものである。教授は「免許を受けるのを怠った」とし、本来は必要だという認識を有していた。

 同取締部ではMDMAについて「横流しや自己使用は見受けられない」ものの、あくまで免許を「うっかり」ではなく「自覚のうえで」所持していなかったことで違法と認識した。学生と助教は、教授が免許を持っていなかったことを「知らなかった」と話している。彼らに犯罪加担する意図はないようだ。

 同取締部も「とばっちりな面もある」と一部で同情するが、それでも“犯罪”の実行者となったために事件化した。

 松山大は16日、「不祥事に対するお詫び」を公式サイトに掲載。岩村教授を1月23日から無期限の自宅待機にした。同大によれば、薬学部が新設される際に招聘され、07年4月から同大教授。そのときも免許は持っていない。学部設立には決まった人数の教授が必要で、立場としては大学よりも岩村教授の方が強い一面もあった可能性がある。

「麻薬関連を研究していることで、免許を持っていると信じて確認を怠った。持っているか聞きづらい? そうですね…」(同大広報部)

 合成麻薬の製造に関わった疑いのある卒業生は11人と発表。「誠心誠意をもっておわびしないといけない。起訴になるのか、起訴猶予になるのか。進展を見て4人には能動的におわびしていく」とする。

 薬剤師法第5条は「薬事に関し犯罪又は不正の行為があった者」に薬剤師免許を与えないことがあるとする。今回の事例が「犯罪又は不正の行為」に該当してしまえば、薬剤師を志す学生の夢が絶たれる最悪の事態にもなりかねない。

 なお、助教は「教授をサポートする立場で、免許の有無を確認することができた可能性があった」として16日から自宅待機が始まった。だが、その一方で「薬学部は“白い巨塔”じゃないですが、縦社会。上には何も言えなかったと思う」(同大)とも。

 免許取得は教授の倫理観と責任に任されているが、大学の仕組みも変える必要があるだろう。全国で学ぶ学生は、今すぐに教授の免許を確認するべきだ。
 なお、岩村教授はMDMAなどを合成する実験を学生にさせたが、出来上がった薬物の効果まで検証していない。捜査関係者は「動物実験した形跡がない。ただ作っただけ。学術研究と言えば、すべて済まされるんだろうけど、なんで作ったんだろう?」と首をかしげている。