ゴーン被告が反論動画公開…「ユダ」は誰だ?

2019年04月10日 16時15分

 ゴーン被告が「ユダ」と称した裏切り者は誰だ!? 会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕された日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告(65=同法違反の罪などで起訴)の反論動画が9日、公開された。同被告は一連の逮捕劇を日産関係者による「陰謀」と主張。だが、肝心の首謀者の実名は代理人の弘中惇一郎弁護士(73)の判断により、カットされた。こうなるとますます気になる。いったい誰なのか? 本紙の取材で浮かび上がった2人とは――。

 公開された動画は7分37秒で、ゴーン被告が4日に会社法違反容疑で東京地検特捜部に再逮捕される前の3月下旬~4月3日に収録された。

 白髪交じりのゴーン被告は「すべての嫌疑について私は無実だ。108日間という期間を拘置所で過ごしたにもかかわらず、私は常に無実であるという一貫した立場だ」と強調。その上で、4度の逮捕は単なる事件ではなく、日産の経営陣による「陰謀」「謀略」「中傷」と言い切った。

 発端はルノーとの経営統合に対し、社内の一部の人間が「日産の独立性を脅かすかもしれないと恐れた」ことから起きたと分析。「明らかに自分たちの利益のため、自分勝手な恐れを抱いた数名の幹部が汚いたくらみを実現させるべく仕掛けたものだ」と訴えた。

 会社の資金の不正流用という容疑から日産を財布代わりにしていたイメージが付きまとうが、ゴーン被告は「私を強欲で独裁的な人物として塗り固めるためになされたものだ」。業績不振の原因は現経営陣にあるとし「アライアンスをより強化するためのビジョンもない。本当にうんざりさせられる」と痛烈に批判した。

 弘中弁護士によると、ゴーン被告はこの動画で「陰謀」を企てた日産経営陣の実名を挙げたが、名誉毀損などの「法律的なリスクがある」との判断で、同被告の了承を得て該当部分をカットし、非公開にしたという。

 肩透かしにあった報道陣だが、それで引き下がるわけにもいかない。事前の情報では、司法取引に応じたとされるハリ・ナダ専務執行役員と元秘書室長で現三菱自動車の大沼敏明理事のほか、西川広人社長ら経営陣の実名を出すとみられていた。本紙の取材によれば、ゴーン被告が実名を挙げたのは「2人」(関係者)とみられる。中でも有力視されているのは、西川社長と2005年から13年まで最高執行責任者を務めた志賀俊之取締役(65)だという。果たしてその通りなのか。

 ここで「えっ?」と思う人はかなりの日産通。実はこの2人、不仲で有名なのだ。日産関係者は「2人は入社が1年違いで、西川さんが東大卒なのに対し、1年先輩の志賀さんは大阪府立大卒。先に出世したのは、ゴーンにべったりだった志賀さんで、西川さんは激しく嫉妬していたといいます。この2人が協力するとは思えないのですが…」と証言。

 ただし、こうも考えられる。業界関係者は「2人の不仲説は広くマスコミに知られていますが、あえてそういう情報を流したのではないか。普段は不仲でもゴーンを引きずり落とすことに関しては、意見が一致。西川社長に至っては業績不振の責任を取らされ、辞めさせられる寸前でしたからね」と推察する。
 目をかけていた志賀氏の裏切りに、ゴーン被告が「ユダだ!」とブチ切れたという情報もある。自らをイエス・キリストになぞらえるあたり、いかにもゴーン被告らしいといえそうだ。

「とはいえ、この日公開された動画では目新しい情報は一つもなかった。裁判は証拠を提示し、事実関係のみで争う場。陰謀論が出てきた時点で、ゴーン被告はヤキが回ってきたのかもしれない」とは前出の業界関係者。

 弘中弁護士はゴーン被告の勾留を認めた裁判所の決定を不服とし、10日にも最高裁に特別抗告を申し立てるというが、潮目は変えられるか…。