【佐賀・玄海町】全住民の「個人情報盗難」なぜ発覚?

2019年03月06日 07時15分

 佐賀県玄海町の全住民の個人情報を不正に持ち出したとして町個人情報保護条例違反の疑いで逮捕・送検された元町住民福祉課長の中島泰広容疑者(53)について、県警は4日までに、職場の女性職員らの健康診断票を不正に持ち出したとして同容疑で追送検した。いったいなぜ中島容疑者はこんなバカなことをしたのか? そして今回の町を揺るがす大事件は、実は地味な事件の捜査から発覚したものだった。

 2月26日付の追送検容疑は、総務課係長だった2017年2月、職員の健康状態の資料を見られる立場を利用して、役場の女性職員3人の身長、体重、腹囲などが記載された健康診断票を私有のスマートフォンで撮影し、持ち出した疑い。

 捜査に当たる県警サイバー犯罪対策課は「女性らには強い処罰感情がある」と語る。中島容疑者も事実を認めて「性的興味があった」と供述しているという。

 ちなみに、フェチ事情に詳しい関係者は「真の変態が収集するのは“情報”です。情報とは体のあらゆる部分のサイズや、血液や肝臓の数値などです」と指摘する。

 中島容疑者は、17年5月18日、玄海町の全住民6335人分の住民基本台帳データを不正に持ち出した疑いで、今年1月31日に同容疑で逮捕されている。全住民の氏名・年齢・性別・住所などが載ったもので、役場のパソコンから私物のハードディスクにデータを移し替えて持ち帰っていた。職員の人事評価や給与や処分履歴などが分かる約35万件のファイルも持ち出していた。

 町全体を“丸裸”にする行為で、そのデータは「『名簿屋』と呼ばれ、振り込め詐欺グループや闇金融など反社集団に情報を流す業者にとってメシの種です。外部に漏れていない公務員の不祥事も“脅し”のネタに使えてしまう」(犯罪事情に詳しい関係者)。

 そうなると、懸念されるのは情報流出なのだが「捜査では流出は確認されていない」(サイバー課)。むしろ、町が隠していた不正を世に問おうとしていたのだろうか…。「いや、そんな義憤に駆られた犯行でもない」(同課)

 では、なぜこんなことをしたのか。捜査関係者は「中島は役場の情報を持ち出した理由を『個人的な利便性のため』と話している。警察では一種の収集癖とみている。人のプライバシーをひそかに入手して『俺はオマエのこんなことを知っているんだぞ』と精神的に優位に立とうとしていたのでは。情報を持っていることで、他人に優越感を抱くタイプだろう」と明かす。

 実は、この事件は別の事件をきっかけに明るみに出た。昨年、県警はパソコンのウイルス対策ソフト不正使用問題を追っていた。ネットオークション上にソフトの不正な認証番号が売り出されていて、その問題に関与していたのが中島容疑者だった。昨年11月に家宅捜索して、押収されたハードディスクから玄海町のデータが出てきたのだ。

「“本丸”が役場のデータ流出で、それを狙うためにウイルス対策ソフトで家宅捜索を行った? いやいや。ソフト問題を捜索したら、たまたま流出が発覚したんですよ」(捜査関係者)。まさに棚からぼたもちの構図なのだが、地道な捜査を花開かせた佐賀県警がアッパレと言えるだろう。

 1月31日逮捕の事件は処分保留になった。2月15日に釈放され、在宅のまま余罪を調べていく。ウイルス対策ソフトの問題は不正アクセス禁止法違反容疑で追送検する見込みで、また、テレビの有料放送を無料で視聴するB―CASカードを不正に改造したとして私電磁的記録不正作出・同供用容疑でも追送検する方針だ。いずれも容疑を認めているという。

 事件以降、役場のパソコンはデータ抜き出しができない処置が取られたというが、町民は「何らかの法の裁きがなければ、町の人たちは納得しない」と話している。

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