千葉県野田市の市立小4年生、栗原心愛(みあ)さん(10)が自宅浴室で死亡した事件で、傷害容疑で逮捕された父親の会社員・栗原勇一郎容疑者(41)の壮絶な家庭内暴力が浮上している。一昨年、心愛さんが学校に父からのいじめを訴え、一時保護した千葉県柏児童相談所は28日、記者会見を行い「保護解除後、職員も学校職員も自宅を訪問していなかった。対応が不適切だった」と謝罪した。

 事件は、勇一郎容疑者が24日午後11時10分ごろ「娘を風呂場に連れて行きもみ合いになり、娘の意識と呼吸がなくなった」と自ら110番通報したことで発覚した。救急隊が駆けつけたときには、心愛さんはすでに死亡しており、あごの付近に軽度の死後硬直が確認された。死亡後、長時間にわたり、放置されていたとみられる。

 県警の調べによると勇一郎容疑者は、24日午前10時ごろから同11時20分ごろ、勇一郎容疑者が自宅マンション浴室で心愛さんの髪の毛を引っ張り、冷水のシャワーをかけ、首付近をわしづかみにするなどしてけがを負わせた疑いが持たれている。

 同容疑者は「娘がおねしょをするので、生活態度を注意した。うるさくて暴れるので、しつけのためにやった。ケガをさせたつもりはない」と供述している。

 司法解剖の結果、心愛さんの体には複数の皮下出血や変色があったが、死亡と直接結びつくような外傷はなく死因は不詳だった。

 一家は勇一郎容疑者と妻(31)、心愛さんと次女(1)の4人暮らしで、犯行当時は全員在宅していた。以前は沖縄県糸満市に住んでいたが、2017年9月、野田市へ引っ越してきた。

 28日、会見した柏児童相談所によると、心愛さんは同年11月の学校のアンケートに「父からいじめを受けている」と回答していたことから、野田市から「身体的虐待を受けている疑いがある」と同児相に連絡があり、心愛さんを同年12月27日まで保護していた。保護した際、心愛さんは職員に「お父さんが怖い」と打ち明け、頬には叩かれたような痕があったという。

 一時保護の期間中には両親と8回面談を行っていたが、勇一郎容疑者は「虐待は思い当たらない」、母親は「わからない」と話していた。心愛さんは翌18年1月、同じ野田市内で小学校を転校。理由について勇一郎容疑者は「家の教育方針と学校に相違があるから」と話したという。

 児相が保護解除としたのは、親族のサポートが得られると判断したからだったが、同3月上旬、野田市内の親族宅から自宅へ戻った後、児相は直接、訪問していなかった。

 今月7日の始業式を心愛さんが欠席した際、勇一郎容疑者は学校に「娘は沖縄の妻の実家にいる。1週間ほど休む」と連絡していた。児相は、心愛さんが今年一度も登校していないことを死亡3日前の21日に把握したが「危険性とつなげて考えることができなかった」と釈明した。

 同児相は「虐待は一時的なもので重篤ではなく、状況は改善したという保護解除の判断は妥当だったが、その後の対応が不足していた。保護解除後、児相と学校の職員が一度も自宅を訪問していなかった」と謝罪した。

 学校や児相、母親、誰かが助けてやれなかったのか。その背景には勇一郎容疑者による壮絶なDVがあったとみられる。

 捜査関係者は「母親は沖縄の児童相談所には夫のDVを相談していたが、引っ越して来た千葉の児童相談所には相談していなかった。父親の容疑立証のため母親に行った事情聴取では『夫が怖くて言えなかった』と話していた」と語った。

 近隣住民も異常な音を聞いていた。

「男性が怒鳴る声や、ドンという音を聞いた。女児が泣き叫んで『お母さん、怖いよ』と助けを求めるような声も聞いた」

 父親のDVは心愛さんだけでなく、母親にも及んでいたとみられ、犯行時も母親は止められなかったようだが、幼い命が奪われる前に周囲の大人は何かできなかったのか。