聴覚障害の女性を手話で脅し、書面を無理やり書かせたとして、強要罪に問われた宮城県仙台市の住吉会系暴力団組長の阿部太被告(54)の初公判が15日、東京地裁で行われた。

 阿部被告は2017年6月9日、妻や組員に命じ、東京・中央区の喫茶店などで、女性を手話で脅し謝罪書面を書かせたとされる。

 昨年10月の逮捕時には、阿部被告はじめ組員も聴覚障害者であることから“静かなるドン”と話題になった。同被告らは障害者を集めて、障害者年金や預金を不正に搾取していたとみられる。被害女性は苦しめられていた老人を保護したが、そのために金ヅルを奪われた同被告らが「老人をどこに隠した?」と詰め寄っていたわけだ。

 阿部被告の指示を受けた妻や組員は「おまえがおじいさんを隠してるんだろ。案内しろ!」と激しい手話で女性をおびえさせた。恫喝の最中も、妻らはLINEのビデオ通話で、同被告とやりとりしていた。最終的には「おじいさんがいなくなったことの責任あります。1週間後までに返すことを約束します」という約束書を女性に書かせたのだった。

 現場の防犯カメラには、手話の会話の様子や女性が涙目になっている様子が写っていた。女性は「手話でスゴまれたので怖かった」とした。

 起訴内容に間違いがないか問われた阿部被告は「ありません」と話した。法廷には同被告の知人らが集結。普段は会話厳禁の傍聴席だが、そこかしこで手話のおしゃべりが繰り広げられる光景があった。地裁職員が「話はやめて」とクギを刺したが、無音の手話は続けられた。