警視庁捜査2課は11日、大手住宅メーカー・積水ハウスから架空の取引で、約55億円の購入代金をだまし取った地面師グループの主犯格・カミンスカス操容疑者(59)が逃亡先のフィリピンから強制送還され日本に到着したところで、偽造有印私文書行使などの容疑で逮捕した。数々の詐欺事件を仕掛けたカミンスカス容疑者の“闇の履歴書”とはいったい――。

 カミンスカス容疑者は、昨年10月に地面師グループの一斉摘発を前に離日。フィリピンに潜伏していたが、12月19日にマニラの日本大使館に自ら出向き、近くの路上で現地当局に身柄を拘束された。同容疑者はこの日、マニラから移送される際、帽子をかぶり、黒いマスクを着用。報道陣の問いかけには無言を通し、日本に到着後も同様だった。「文書偽造や虚偽登記申請という犯罪には関わっていない」と容疑を否認しているという。

 捜査関係者は「積水ハウスの詐欺事件では主犯3人のうち、カミンスカス容疑者だけが、『小山武』という偽名で、積水との契約現場にいたんです。にもかかわらず、逃亡前から“俺は事件には関係ない。成り済まし犯も知らなかった”と関与を否定してましたからね。今後も否認を続けるでしょう。とにかく、ふてぶてしい男ですよ」と話す。

 カミンスカス容疑者は1959年に高知県南国市生まれ。地元の高校を卒業後、上京した。

「本人によると東京電機大に入学したとか、山野愛子美容専門学校に通っていたと言ってますが、本当かどうかはわかりません。若いころに、新宿を拠点とした某団体に所属していたこともあったようです。ゲームメーカーの税務コンサルタントで、かなり稼いでいた時期もあったようですが、はっきりしているのは10年前に急成長した不動産デベロッパー『ABCホーム』の財務部長として、同社会長の塩田大介氏と脱税容疑で逮捕されたことです」(不動産アナリスト)

 塩田会長と一緒に脱税で逮捕され、実刑判決を受けたカミンスカス容疑者は出所後、積水ハウス事件の主犯格の一人として逮捕された土井淑雄容疑者が事務所を構えていた「サハダイヤモンドビル」(東京)に転がりこんで、事務所を構えた。

「ダイヤモンド製造販売業の『サハダイヤモンド』は一時、ジャスダックに上場していましたが、経営危機に陥り、16年11月に上場廃止になったんです。そのビルに土井が『ビショップ・パートナーズグループ』という会社を設立。土井は積水ハウスからだまし取った金を運んでいた疑惑があるんです」(土井容疑者を知る関係者)

 カミンスカス容疑者は“積水詐欺事件”以降、羽振りが良くなった。都内に複数のマンションの部屋を購入し、錦糸町や浅草のフィリピンパブやロシアンクラブで豪遊するようになった。

「カミンスカス容疑者は3度結婚していて、最初は日本人、2度目はフィリピン人、3度目は錦糸町のインターナショナルクラブで働いていたリトアニア人と昨年3月入籍。当時、逮捕の噂が出ていたので、妻の姓であるカミンスカスと改名した。積水との契約時は小山武と言う名前を使っていた」(前出捜査関係者)

 土井容疑者の知人によれば、「カミンスカス容疑者には55億円のうち10億円が分配された」という。同容疑者は離日前にマンションの一つを5000万円で売却しているが、フィリピンで出頭した際、日本円にすると、わずか300万円しか所持していなかった。事件の真相解明とともに消えたカネの流れも追うことになる。