全容解明にはナゾも残った極刑宣告――。2015年8月、大阪・寝屋川市の中学1年平田奈津美さん(13=当時)と星野凌斗さん(12=同)が殺害された事件の裁判員裁判(浅香竜太裁判長)の判決で、大阪地裁は19日、殺人罪に問われた山田浩二被告(48)の2人に対する殺意を認め、殺人罪が成立するとし、求刑通り死刑を言い渡した。公判は被告の供述も踏まえて進められたが、ハッキリしなかった疑問も残る。専門家が本紙にそれを解説し、判決を支持する一方で残る今後の展開への懸念も口にした。

「被告人を死刑に処する」

 裁判長から主文を読み上げられた山田被告は、遺族がいるとみられる検察側に設けられたついたての奥に向かって何度も頭を下げた。閉廷後もしばらく、証言台から離れようとしなかったが、職員に促されると、裁判長やついたてにお辞儀をしながら退廷した。

 判決は「殺意があったことは明らか」と、2人を頸部圧迫で窒息死させたと認定。パニック状態に陥った末の傷害致死だとする弁護側の主張を退けた。計画性は見られないが、強制わいせつ罪などの前科と比べてエスカレートし、更生も困難と判断。「生命軽視の姿勢は著しい」と求刑通り、死刑を言い渡した。

 裁判長は、平田さんが死の原因をつくったかのように繰り返した山田被告の供述を「ウソ」と切って捨て、星野さん殺害後に平田さんを殺害したのは「口封じと考えられる」とした。

 2人との接点については「こんな時間に何をやってるのかと思い、心配で声をかけた」と語っているが、2人を狙ったのか、どちらか1人を狙ったのかは、法廷では明確にならなかった。

 元警視庁刑事で犯罪心理学者の北芝健氏は、山田被告の前科に着目してこう話す。

「ペドフィリア(小児性愛者)の傾向がみられるが、特に男の子へのシンパシーを感じている。そこに、いたぶって潰すというサディスティックな感情が加わって快感を得ている。ターゲットは星野君で、平田さんは巻き込まれた」

 検察側は公判で、山田被告が過去に、14~17歳の少年11人に対する傷害やわいせつ、ナイフを使った脅迫、テープで縛る、果てはナフサ(液体燃料の一種)をかけて火をつけるといった蛮行で前科6犯、うち5犯で刑務所送りとなり、事件の約10か月前に出所したばかりと明らかにしている。

 北芝氏によると、長期間による服役でも、更生は難しいという。

「過去の話になるが、10歳くらいの男の子にしか性欲を感じない男がいた。男の子を殺して12年ほど服役したが、出てきて再び10歳くらいの男の子に手を出した。くしくも、前回と同じ弁護人が裁判を担当するようになり、その弁護人が『嗜好の問題で治らない。10歳くらいの男の子にのみ熱狂的な反応を示す』と話した。山田被告も同様と考えられる。何より前科6犯は多く、全く反省していない証拠。興味の向くままに『今度はこうしてやろう』と殺害に至ったのだろう」(北芝氏)

 極刑の判断については「裁判長の判決文の通りで妥当な判断」と支持する一方で、控訴審で頻発する減刑判決に懸念を示した。弁護側は「事実誤認は明らかだ」とし、即日控訴している。

 判決公判に先立ち、大阪地裁が裁判員1人と補充裁判員2人を解任していたことが判明。理由は明かされていないが、かつて裁判員を経験し、控訴審で判決が覆ったという男性は「裁判中に気分が悪くなって退廷したり、3日間ご飯が食べられなかったという女性もいた。私も3か月くらいたって『あれで良かったのかな』と思い悩んだ。それくらいの気持ちで臨んでいるんだから、辞めたくもなる気持ちは分かる。礒飛(京三=12年・大阪ミナミ通り魔事件)や君野(康弘=14年・神戸女児殺害)の裁判でも一審の死刑判決が破棄されているから、今回もどうなるか」と語る。

 閉廷後、裁判員5人と補充裁判員1人が会見に応じ「量刑判断に悩みました」と口を揃えた。社会的に注目を浴びた凶悪事件とあって「辞めようとは思わなかったが、精神的につらいと思うことはあった」との声もあったが「みんなで議論して冷静な判断ができた」と胸を張った。今後の行方は――。