処方箋が必要な薬を薬局から盗んだとして、神奈川県警捜査3課は28日までに、窃盗容疑で同薬局のアルバイト・石川賢悟容疑者(34)を逮捕した。

 逮捕容疑は今年2~4月、薬剤師のアルバイトとして勤務していた薬局から、仕入れ価格約9000円の片頭痛治療薬1箱を盗んだ疑い。調べに石川容疑者は「私は盗んでいません」と容疑を否認。だが、この薬局では向精神薬など68種類の医薬品約2万8000点(約300万円相当)がなくなっており、警察は同容疑者の関与を調べている。

 捜査関係者によると、この薬局は9月4日に保健所の監査があり、医薬品が足りなくなっていることを指摘されたため、県警厚木署に相談した。警察が調べると、石川容疑者の携帯電話に医薬品の買い取り業者と連絡を取った履歴などがあったことから、事件が判明した。

 石川容疑者は昨年12月、薬剤師として勤務していた同県茅ヶ崎市立病院から約200万円相当の医薬品を着服した業務上横領の罪で懲役2年6月、執行猶予4年の有罪判決を受けていた。昨年7月には、今年のノーベル賞受賞者の本庶佑京都大特別教授が開発を導いたことで知られるがん治療薬「オプジーボ」など(約1億円以上)を同病院の薬品庫から盗み、不正販売して約6100万円の利益を得たとして、同県警に組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)の疑いで追送検された。

 追送検容疑は、昨年9月から今年4月までの計29回、偽名を使って品目をサプリメントと偽り、横領した薬を都内の薬品卸業者に送り、代金を受け取ったとしている。

 当時の取り調べでは、容疑を認め「薬剤師が嫌になり、他の仕事をするために3億円貯金しようと思った」と供述。医療関係者は「この病院の被害額は1億円以上だったが、容疑者は全額を病院の口座に弁済している。本当に3億円ためる予定だったようで、金は使っていなかったのだろうが、余罪はまだまだありそうだ」と話している。